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第3話

「あの…、祖母ちゃんは先月亡くなったんだ」 「そうかと思ってはいた。優しい人だったな」  男は沈んだ顔で呟く。 「うん」  男が祖母の死を悼んでいるのを感じたが、本題に入らないと。 「えーと、それで、この家は俺が住むことになったんだ」 「本当に? 敏明がここに住むのか?」  男はぱっと表情を明るくした。  一人が寂しかったんだろう。でも俺は得体の知れない男と暮らすのは嫌だ。 「ああ。だから悪いけど」  出て行って欲しいと言いかけてためらった。どんな事情か知らないが祖母と暮らしていたようだし、頭の具合も心配な男を追い出していいものか迷ったのだ。でも居つかれても困る。 「悪いけど?」 「あー、どこか行くあては?」 「え?」 「だから親戚とか…、ていうか家は?」 「ここだ」  …やっぱり病院かな。身元がわからないなら警察? それよりもこんな親戚がいたか母に訊くのが先か。一瞬のうちにそんな考えが頭を巡る。 「もしかして覚えてないのか?」  男は悲しげに俺を見る。  子供みたいに感情がわかりやすい。そんな顔をされると申し訳ない気分だ。 「ここでかくれんぼしただろう?」 「それは覚えてる」 「敏明がかくれんぼの途中でいなくなったから、どうしたのかと心配していた」 「えーと、それはいつ頃の話?」 「敏明が十歳の夏だ」 「ああ…」   夏休み中に母が交通事故にあったと連絡がきて、急に自宅に帰ったのだ。幸い骨折だけで後遺症も残らなかったが、看病が必要でここには戻れなかった。

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