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第4話

「それからずっと待ってたのか?」 「ああ」  男は大まじめな顔でうなずく。  ともかく男が自分を座敷童だと思いこんでいるのは理解した。  一体どうしたもんだろう? 困惑のため息が出る。  と、男の体がぐらりと揺れて前に倒れ込む。 「え、大丈夫?」  支えた体は驚くくらい軽かった。顔色も白くて体温がやけに低い。  病気? いや頭の話ではなく。 「ああ。敏明、すこし生気をくれ」 「せいき?」  訊ねた瞬間、首の後ろに腕が回って口づけられていた。  は? 何これ。  驚いていると舌が入って来た。 「おいっ!」  思わずつき飛ばしたら男はあっさり床に倒れ込んだ。 「あ、ごめん」 「ひどいじゃないか。十年以上も放っておいて、もうすぐ消えるかもしれないと覚悟までしたのに」  恨みがましい目で睨まれると、その迫力にすうっと背筋が冷えた。言うことを聞いた方がいいかもしれない。 「あの、生気って?」 「座敷童は人がいない家には住めない。その家に住む人の生気で生きているから」  つまり半年以上人がいないこの家で、飢えながら過ごしていたって? 「それなら引っ越したらよかったんじゃないか?」 「それはできない。俺は敏明に見つかったから、もうこの家を出て行けない」 「どういう意味?」 「座敷童が見える人に会えたらその人と縁ができる。縁ができたらその家から動けない」 「つまり俺と一緒じゃないとダメって?」 「そうだ。敏明がかくれんぼの途中でいなくなったから、ここで待っているしかない」  えーと、俺はこいつをこの家に縛りつけて、そのままいなくなったってこと?  ていうか、さっきから俺の思考もおかしい。  本当に座敷童? まさか!

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