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第5話

「敏明、頼むからもう少し生気を分けてくれ」  そう言って泣きそうな顔をする。 「え、でも、キスは嫌だ」  怯む俺に男はすっと寄って来た。  今、浮いた? 歩かずに移動したよな? マジで座敷童? 思いこみじゃなくて?  パニックになる俺に男はさらに迫ってくる。 「涙でもいい」 「そ、そんな急に泣けないって」 「じゃあ精液でもいい」 「はああ?」 「敏明の体液が欲しいんだ」 「お前、祖母ちゃんにそんなことしてたの?」 「そんなわけないだろう。人の生気を食べていると言っただろう」 「だ、だったら俺がいればいいんじゃないか?」 「半年も飢えてて、もう限界なんだ」  そう言いながら俺の首筋を撫でる。  その手はひんやりしていて、本当に消えそうな感じだ。  端正な顔が近づいてくる。半分やけになって俺は目を閉じた。座敷童か半信半疑だけど俺のせいなら仕方ないのか?  ああもう、訳がわからん。  触れた唇は冷たかった。舌で唇をなぞられてぞくりと背筋が震えた。  嫌悪が恐怖か判断できない。遠慮なく口の中を舐められる。頬の内側や上顎、歯並びを確かめるように舌を回され、くすぐったくて身をよじった。  いつの間にか男の腕は俺を抱きしめていて、体がひんやりと冷えていた。  舌を絡め取られて、溢れそうになる唾液をすすられる。それが目的とはいえ、こんな深いキスは久しぶりでもぞもぞする。  ずいぶん長い間、熱心に舐められて舌を吸われて息が上がる。  なんだか気持ちがいい。 「も、いいだろ」  身を引いたが男は俺の後頭部に手を添えて、まだと言うとまた唇を押しつけた。半年分だもんな。  男のキスは巧みで頭がぼうっとする。  いつの間に体が熱くなっていて、頬がほてっていた。  やけに気持ちがいい。体を撫でる男の手は温かくなっている。  ゆっくり床に押し倒された。 「敏明、やっぱり精液をもらっていいか?」 「は? ダメに決まってるだろ!」 「でもこれ、どうするんだ?」  男がそこを撫でて初めて、勃起しているのに気がついた。

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