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第2話
「うわ、なっつかし!」
引っ越しの準備中、机の引き出しの奥から出てきたのは、学生証。
「なになに?」
隣で荷造りを手伝う彼が身を乗り出してきた。
「見て、これ」
笑いながら学生証を手渡す。
「若っ!てかダサっ!」
「うるさい」
大学の学生証は、入学前に撮った写真を四年間変わらず使い続ける。だから、この顔写真は高校卒業の頃のものだ。
俺に怒られてケタケタ笑いながら、彼はまだ学生証を眺めている。やがて笑いは収まり、まだ学生証を見つめたまま黙りこくった。
「どうしたの」
「思い出すよ、初めて会ったときのこと」
うん、そうだね。
俺も思い出してた。
初めて会ったあの日のことを。
地元の高校を卒業と同時に上京することになり、完全に浮かれていた俺は、俗に言う『大学デビュー』を決め込んで調子に乗っていた。
それまで特に気にしたこともなかった髪型や服装にばかり気を取られ、派手な仲間とつるむようになりーー
そこで正気に戻してくれたのが、目の前の彼。
彼は俺のことが好きだと言った。
男同士なのに?と戸惑ったが、親身になって体当たりで接してくれる彼に、俺もだんだんと絆されていって…
「ほんっと、あの頃のお前は見てられなかったよな、危なっかしくて痛々しくって。ムリしてんのまるわかりだったし」
「もう、その件には触れないで…」
まさに黒歴史というやつだ。
タイムマシンに乗って当時の自分を殴りに行きたい。
「…でも、さ。そのおかげで今こうしてるんだし、ね」
彼の声色が急に優しくなり、俺の肩を抱いた。
「うん。まさかこんなに長く一緒にいるとは思わなかったけど」
俺が少し照れながら言うと、彼は猛抗議してきた。
「えーっ?俺は最初から思ってたよ?ずっと一緒にいるって」
あれから五年。
俺たちは明日から一緒に暮らす。
【おわり】
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