「引越し屋って３人、４人？ 　お茶の用意はいいのか？　それともドリンク剤の方が良い？」 「要らないだろ、冷蔵庫もないのに。冷えてもいない飲み物を出されたって迷惑だよ」 　正規の料金を払って仕事してもらうのだから、業者にそんな気遣いはいらないだろうと思うのだが、こいつには気掛かりらしい。値引交渉もしないで即決したんだ、そこまでしてやらなくていい。 　引越し屋のトラックを待つ間、自作の『やることリスト』の確認をする。 「電気の手続きは？」 「済んでる」 「ガスは？」 「同じく」 「水道」 「連絡した」 「町内会……は、入ってなかった」 「住民票は役所が開いてる平日にそれぞれが行くとして、郵便局はまだ」 「郵便は、用紙をポストに入れるだけだ」 「新聞は止めてた。あとはなんだっけ」 　リストアップした事柄にレ点を付けていく。 　諸所の手続きは苦ではない。ものすごく苦手だと言う人もいるようだが、『やることリスト』が出来てしまえば後は片付けていくだけだ。これは先に進むためのリスト。レ点を増やし続ければ終わる。脇道に逸れずに淡々と事務的に進めればいいだけ。 「あとは不動産屋に確認の電話を…… 　いや、それは俺が直接行こう」 　大家に鍵が一本足りないことを詫びなくては。 　引越し屋のトラックがハザードランプを点けて止まる。レ点で埋まったメモはポケットに戻した。