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「やめろ! なあ、やめないか?」  小柄な永里郁磨(ながさといくま)にとって、体格もよく背丈も高い寒川慶(ふゆかわけい)を押し返すのは、土台無理があった。本気で嫌がっているわけじゃないことは、悔しいことに慶は知っているような気がした。  抱き締められる度、触れられるたびに心と体が満たされていく感覚がして、広い背中にしがみつきたい。そう思うだけで、身体の奥からじわじわと快楽が湧いてくる。  慶は、なぜと首を傾げ、乳首をきゅっとつねった後、優しく撫でる。見慣れている仕草なのに、新鮮で形容しがたい恥ずかしさでいっぱいになった。 「アニキにフラれたのに、まだ引きずっているんだろ?」 「うっさいな。放っておいてくれよ」 「だから、俺もやめない」  シャツをまくられ、顔をうずめられた瞬間、あっと甲高い声が漏れた。上向いている郁磨自身をいじってほしくて、腰を乱暴に揺すった。 「なあ、キスしていいか?」  以前、カッとなった時にひどい言葉で慶を傷付けてしまった。 「して……、慶のキス気持ちいいから、たくさんして」 「すっげー嬉しい。メッチャする。ホント振り回されてるな」  笑いながら何度も触れるだけのキスをし、呼吸を奪う程深く激しく求めてくる。郁磨がとろけたような表情をすると、欲望をたぎらせた目が満足げに、三日月のように細くなる。 「俺、郁磨とするキスが好き」  そう言い何度も口づけた。離れていく舌を無意識に追いかけ、濡れた瞳で彼を見る。すると、熱くなった唇を撫でられた後、また深く絡み合う。 「最後までしねえから」  失恋でやせてしまった自分を心配してくれているのだろうか。  太ももや下肢に潤滑剤を塗りたぐられ、たぎった熱塊で擦る。熱くて、気持ち良くて、慶の乱れた吐息が肌にかかるたびに、おかしくなってしまいそうなほど感じる。何度もキスしながら、広い背中に腕を回す。やがて、視界が白くなり、二人分の白濁液が肌に飛び散った。 「好きだ」  慶の目を直視できなかった。

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