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6話

「来週?」 「そう。まだつらいなら、行かなくてもいい」  残暑が厳しくなった頃、見た目も体重も失恋前に戻った。  そろそろ、以前のように寒川家で夕食を摂らないかと提案されたのだ。 「僕が元気になったら、今まで通りに戻るのか?」 「郁磨がいいって言うなら、ずっとこうしたいな」 「なんだよ、あきたと思ったじゃないか。お前のこと気にし過ぎてるから、嫌われたんじゃないかって」  早口でまくし立てた言葉を反芻している慶にたたみかけた。 「だから、慶のことが好きだって言ってんだよ」 「マジで⁉」 「だから、抱けよ」  飛びつかんばかりに抱き締められ、彼の体臭に眩暈がした。 「飛び切り優しくしてやる」  慶が郁磨の服を脱がし、彼も服をぬいだ。筋肉がついた肌があらわになり、視線を逸らした。 「恥ずかしい? 結構恥ずかしいことしたじゃん」  身体を撫でている手が、乳首を摘まんだ。途端漏れた声に赤面した。好きな人としている。散々愛撫され、太い指先で拓かれた内部をほぐした後、「いいか?」と訊かれた。 「今更やめられないだろ? 慶が我慢した分、全部欲しい」  脚を開き、腕を慶の背に回した。ニヤリと笑った気がした。 「やめろって言われてもやめないからな」  慶の凶器がゆっくりと、だが確実に押し入ってくる。圧迫感と切なくて、苦しくて、痛くて。でも、心まで満たされていく不思議な感覚がする。 「慶、慶……! 好きっ、あっすごい」 「あんま煽るなよ。手加減できなくなる」  欲望をたたえ、抑えているようなぎらついた目で、郁磨を見つめた。  張り出した先端で前立腺を押されるのもいいが、奥もたまらない。そこにぶち当たるように、卑猥に腰を動かす。 「それすっげーいい。めっちゃ気持ちいい」 「ううっ、ああっ。やあっ……イくッ、イくっ」  切羽詰まったように、許しを乞うと内部にいる慶をきつく締め付けたまま、絶頂に達する。 「……くそっ、持ってかれた」  悔しそうにつぶやいた彼は、郁磨が落ち着くのを待ってまた動き始めた。 「やめっ、だめだって……、まだダメ」 「やめない。郁磨が我慢しなくていいって言ってくれただろう?」  涙が浮かんだ眦を舌先ですくわれ、耳元でささやかれた。彼の重みも滴れてくる汗も、律動さえも気持ち良い。       § 「郁磨、無茶させたか?」 「疲れた」  汗まみれの身体を横抱きにされ、浴室で洗ってもらっている最中に、もう一度交わった。心地の良い疲労感。 「ごめんな」 「謝るなよ。僕だってしたかったからさ」  積極的に行動できない臆病な自分は、恋心を簡単に諦められない。だから、失恋する理由が欲しかった。

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