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第1話

……生気が欲しい……  夕日の差し込む通学路。サングラス越しに見えるアスファルトがぐにゃりと歪んだ。塀の影に隠れるようにして歩いていた僕はよろめいて、うっかり直射日光に体を投げ出した。  皮膚が焼けるように熱くて悲鳴をあげる。 「あぁッ!」  アスファルトにうずくまる僕を周りの人は不思議そうな顔をしながら素通りしていく。僕は夕日に当たらぬよう影に隠れながら、近くに見える校舎を見上げた。 (もうすぐ学校なのに……)  百メートル先の校門が果てしなく遠く見える。絶望的な気持ちで座り込んでいると、とある人影が僕の前で止まった。 「おい、大丈夫か」  視線を上げると、十代半ばの少年が心配そうな顔をこちらに向けている。健康的な肌に凛とした眉のはっきりした顔立ちの少年だった。 「立てるか?」  そう問われたが、僕の身体は鉛のように重く言うことをきかない。  彼に支えられた瞬間、甘い香りが僕の鼻腔を刺激した。  ――ああ、なんて美味しそうな匂いなんだろう。  ――Tシャツの丸い襟元から覗くその鎖骨に噛み付いて、喉を潤したい。 「今すぐ食べてしまいたい」  そんな欲望が口から漏れたことも気づかず、僕の意識が遠ざかった。 「おい!」  焦ったような少年の声と甘い匂いに包まれながら、僕は意識を手放した。

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