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第2話

「りあむ。お前ももうすぐ十六だ。これからは自分で生き血を手に入れなさい」  パパが突然そう言いだしたのは去年の秋の出来事だった。その宣告に僕は狼狽した。 「そんな……、できないよ」  目に涙を浮かべてそう訴えれば、今までパパは何でも僕の願いを叶えてくれた。しかし、この時ばかりは拒絶するように背を向けられてしまったのだ。 「今までお前を甘やかしすぎていた。……お前もそろそろ一人前の吸血鬼にならないと」  僕……いや、僕ら家族は代々伝わる吸血鬼だ。  山の上で怪物たちと一緒に夜のレストランを営んで暮らしている。  僕はこの十五年間、パパの人間の生き血を分けてもらっていたんだけど、この日を境に与えられなくなってしまった。  生き血がなくても人間と同じ食料があれば何年かは生きていける。  だけど、吸血鬼としての超人的パワーは失われ、体も本来のたくましさを失ってどんどん小さく弱く変化していったのだった。 「学校に行ってみたらどうだい。若い奴がたくさんいるぜ。きっとお前に生気を与えてくれるやつもいるだろうよ」  そうアドバイスしてくれたのは、レストランで働くフランケンシュタインだった。  彼のアドバイスに従い、パパに学校に行ってみたいと言えば、すぐに記入済みの願書を手渡された。まるで僕の申し出を待っていたみたいに。その願書は日光に弱い僕が通えるよう定時制高校だった。  そうして、僕は生まれて初めて学校というところに通うことになったのだ。  入学式も無事に終え、これから初めての授業を受けるはずだった。  まさかそんな日に自分が学校にたどり着くことさえできなくなってしまうなんて、思いもよらなかった。  もしかしたら僕が生き血を吸うことなんて、一生叶わないのかもしれない。

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