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第2話

柚希。 ──ゆずき、 「おい、柚木」 ぴたぴたと冷たい物が頬に当てられ、次第に戻ってくる意識。 遠くから近くから、薄ぼんやりと聞こえてくるのは……何処か懐かしい声。 ………まさか、山下……? な、訳ないか。 きっとこれも、只の幻聴。 ……ああ、とうとうここまできちゃったか。 頭の痺れは取れないし、アレが欲しいと執拗に脳が訴えてくるし…… 開きかけた瞼を再び閉じれば、今度は冷たい物がピタッと頬に押し付けられた。 「……おい柚木、起きろ」 やけにハッキリと聞こえる。 ……これが幻聴なら、かなりの重症だ。 「どういう事だよ、これ」 重い瞼を持ち上げれば、視界いっぱいに、僕を見下ろす山下の顔が。 「………っ、!」 途端に蘇る、羞恥心。 全裸のまま手足を拘束され、顔や口周りには、まだ乾ききっていない白濁液に塗れていて。 まさかこんな醜体を、幼馴染みでもありサークルメンバーの一人でもある山下に、見られるなんて…… 「……なん、で……ここに……」 「それはこっちの台詞」 淡々とそう言いながら、僕に押し当てたペットボトルを脇に置く。 「渡瀬先輩に呼び出されて来たんだよ。……したらいなくて、ここにお前が……」 「……」 ……いないのか、先輩。 「てか、何なんだよ。これ……」 眉間に皺を寄せ、山下が僕の両手首に視線を移す。 手錠。その鎖部分に引っ掛けられた太い鎖の先端は、杭で頭上の砂壁に固定されていた。 最初のうちは、ここから脱出しようと何度も試みたが……結果は見ての通り。 「……僕にも、何が何だか……」 薄く笑みを漏らせば、山下が僕に視線を戻す。

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