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第3話

思い返せば──先にこのサークルに入ったのは、柚希の方だった。 柚希は女友達を誘ったものの、誰も一緒に入ってくれないからと……サークル内容をよく知らないまま、半ば強引に僕を引っ張り込んだ。 柚希がそこまでして入りたかった理由は、とても簡単なもので。憧れのリーダーに、少しでもお近付きになりたかったから。 ……でも、その気持ちは解らなくもない。 明るい金髪。ピアスにファッションタトゥー。 かなり派手で目立つ存在ではあるものの、それ以上の気迫とオーラを持ち合わせている。 ──おまけに、イケメン。 「君が柚木くん? 宜しくね」 切れ長の瞳が僅かに緩み、そこから垣間見えたのは……滲み出る優しさ。 初めて挨拶をした時、男の僕でも惚れてしまう程だった。 風貌は、まるで歌舞伎町ナンバーワンホスト。夜の帝王。 そのせいか。彼は同じサークル……いや、同じ大学内で『キング』と呼ばれ、一目置かれる存在であった。 しかし──キングは、夜な夜なサークルメンバーの男達を引き連れ、ネオン街でナンパした女性達を酒で酔い潰し、全員で輪姦すという愚行を繰り返していた。 その時撮った動画を、飲み会の席で渡瀬先輩に見せられた事がある。 学校関係者はその噂を耳にしながらも、決してキングを咎めたりはしない。……何か、強い後ろ盾でもあるのだろうか。 サークルの表向きは、文化祭等催し物を盛り上げる為の企画運営や、活動を通し他の大学生との交流や親睦を深めるというもの。 何も知らずに入った女性達は、直ぐに脱退。今やこのサークルには、遊び慣れた数名の女性しか在籍していない。 そのせいか、真面目な柚希はこのサークルでは異端で、浮いた存在だった。にも拘わらず、健気に顔を出しては、嫌な顔ひとつせず皆のパシりに徹していた。 その努力が実を結んだのだろう。 柚希は、毎年恒例の『夏の強化合宿メンバー』に選ばれた。 強化合宿メンバーは通例、幹部と幹部候補、そして華のある数名の女性メンバーと相場が決まっている。 しかし、今年は男女一名ずつのパシりが欲しいと、メンバー総意で柚希と僕に決まったらしい。 柚希の話によれば、僕が選ばれたのは……柚希が僕を指名したから、らしいが。

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