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唯一無二の親友
知ってる。
体が弱いことで麗陽(れいひ)が大変な思いをしている、って。
健康優良児のオレが簡単に「気持ちは分かるっすよ」なんて言える立場じゃないけど、辛そうにしている麗陽を見て、なんとも思わないほど極悪非道じゃねぇし、麗陽の大変さを推測できないほど鈍くもないつもり。
だけど、そうした麗陽の大変さをなんとなく理解した上で、オレはやっぱり、麗陽になりたいんだ。1日だけでも良いから。
……むしろ、1日だけの方が良い。
麗陽になって、麗陽の体の大変さを身をもって味わえば、今後の生活で麗陽の役に立てるだろう。してほしいこと、何をしたら疲れるか。
医療知識ならあるし、麗陽の体の大変さを身をもって知れば、麗陽のサポートが問題なくできる。
麗陽になりたい理由の1つは、それだ。麗陽の役に立ちたい。
もう1つは、麗陽になって感じ悪く振る舞いたいから、だ。
オレらしい人付き合いの悪さ。コミュニケーション能力のなさ。それを存分に活かして、すげぇ嫌なヤツになりたい。麗陽として。
麗陽が持ち前のやさしさや、人当たりの良さ、それからなにより本人の努力で築き上げ、大切にしているもの全部、台無しにしてしまうくらいに。手遅れになるくらい、思いきり感じ悪く。
そうして人間関係を全て壊してしまえば、オレが月夜(つくよ)に戻った時、麗陽にはオレだけになっている。オレが、麗陽の1人だけの友達に。
文字通り、「唯一無二」の親友。麗陽には、オレだけになる。それは、すごく魅力的だから。
だから。
だからオレは麗陽になりたいなんて。そんな、いくら親友でも、いくらやさしい麗陽でも流石に軽蔑されるだろう本心は、いつものように飲み込む。
それで、いつものように明るく笑って、すっかり口癖になってしまったこの言葉を口にするんだ。
「それでもさ、オレは麗陽になりたいんだよねぇ」
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