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第7話
「久しぶりの里帰りなら、そのままいれば良かったのに」
セルジュは実家を一緒に出ると帰り際にそう言う。
10年ぶりに帰って懐かしいとは思ったが、あそこは俺のいる場所じゃないと感じた。
変わり映えなんてまったくなかったのに、あそこにはもう俺の居場所はなかった。
「最初に会った時、オマエは俺が嫌いなんだと感じたんだけどな。だから、運命のなんちゃらとかからかったんだけどさ」
初めて局に行って顔を合わせた時に、コイツからは敵意だけを感じた。わかりやすい敵意はとても気が楽で、ついバディに指名してしまったのだ。
「能力がないのに、コネで地位を得る奴が嫌いだっただけです。すぐにアンタは違うって分かったし」
暗い並木道をゆるゆると歩き、素直にセルジュは答える。
「オマエはさっき俺を努力家と言ったけど、人よりあまり努力してない。でも大抵のことは簡単にできちまうんだよ。俺は」
なんだか過大評価されているようで、少しだけこそばゆい気持ちがした。
「アンタの部屋には何も無かったから。仕事で必要なものしか。他のことはしてないんでしょう」
昔からそうだ。
ある程度のことは出来てしまうから熱中すらしない。
何かに夢中になるようなことはない。
だから、やらないといけないことだけに必死になる。
「別にしてえこともないしなあ。趣味すらねえ、つまんねえ男だぜ実際」
……だからかな。
だから、全て持っている恵まれ過ぎた自分のつまらない人生ってのに、Ωだという若干の苦悩が加わったことをおもしれえなと簡単に受け入れることができたのは。
「アンタはつまらないどころかかなり変わった人だと思いますよ。でも、そんなとこに惹かれるのかもしれない」
セルジュは、俺の肩を軽く掴んで足を止めさせる。
「な、に?」
うなじに指を這わされ、軽く頭を傾けて顔を覗き込むと、セルジュはつま先を伸ばして唇を押し付ける。
ああ、これが初めてのキスだなとか思いながら唇を合わせて軽く吸いあげる。
柔らかいは舌先の感触が緩く咥内をめぐり、ぞくりと快感の琴線に触れるとゆっくりと離される。
「をい、オマエ……道端だぞ」
咎めはするが、つい感じてしまって声に勢いがなくなってしまう。
番に反応するっていうのは、こういうことなんだと実感する。
「あと、運命にさえ嘆かないアンタが、そうやって可哀想なくらい辛そうになるのがね、可愛くてたまらないなって」
「ハッ、オマエ趣味わりいな」
笑い飛ばすが、実際感じているのは誤魔化しきれないので、軽く腕を引いて人目も気にせずに絡めてやる。
「………好きですよ」
告げられた言葉は何でも持っているはずの俺がずっと心から欲しいと焦がれていたものだった。
なにより切望していた。
相手から好意が欲しいと、ただひとつだけの願い。
俺はひどく嬉しくなって頷いて告げた。
「も、いーから、早く帰って子作りすんぞ」
照れ隠し半分に少し大きめの声で言うと、俺はその腕を離さないように強く引いた。
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