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第2話
何度も、何度も同じ夢を見る。僕が『圭吾』を殺す夢。
場所は児童養護施設で同室だった部屋で大きくなった圭吾はベッドに横になって眠っている。
ゆっくりと首に手をかけ、力をかけていく。頬を汗が伝う。圭吾は苦しみ喘ぎ僕の手をひっかく。爪が皮膚に食い込む。血が出ているだろうが、痛みを感じない程興奮し、さらに力を加え、喘ぎ声が聞こえなくなるまで首を締め続ける。体が冷たくなり、死んだことを確認する。極限までの緊張がとけ、腕が弛緩し、呼吸が苦しくなり
酸素を求めるように深く息を吸い込むと、頭がくらくらするのが多少収まる。少し落ち着きを取り戻すし、今まで首を締めていた両手を見る。そこには血がべっとりとついている。血なんて一滴もでてないのに、まるで刃物で引き裂かれたような陰惨な光景が僕の瞳にうつる。
僕の言うことの聞かない『圭吾』なんていらない。そんな『圭吾』はいなくなればいい。
だってまたやり直せばいい。最初から育て直せばいい。僕はゆっくりと微笑む。
「また失敗しちゃったね。今度は失敗しないから。戻っておいで」
血まみれの手でそっとお腹に触れると、ベッドに横たわっている圭吾はいなくなり、お腹に吸い込まれていく。お腹が温かく『圭吾』がいることを実感できる。お腹をさすり、愛おしい圭吾をお腹に戻ってきた幸せを噛みしめる。数えきれないほど、殺し、また産み落とす。
夢なのに妙にリアルに感じる感覚。夢だと忘れそうになる。そんな願望を体現する
夢の中で繰り返す行為。それは、からっぽの現実を生きるために。一分一秒でもいい。目を覚ましたくない。『圭吾』との絆を確認するために。どうか眠り姫のように眠りつづけられればいいのに。現実はそう甘くない。
目覚まし時計のアラームが鳴り響く。顔を顰める。
「もう少し、夢に浸らせろよ。空気読よ」
目覚まし時計に本気で文句を言いながら、アラームを止め、体を起こしお腹を撫でる。
「おはよう、圭吾。お腹すいたよね。ママもおなか空いたよ。朝ごはん食べよう」
お腹に語りかけ布団から出て、朝食を作る
朝は必ず取るようにしている。自分は圭吾の母親
栄養を少しでも取らないと圭吾が育たないような気がした
だから、面倒くさくても朝だけはきちんと食べる
圭吾によって生かされている
圭吾は僕にとっての精神安定剤
他人に言えば頭がおかしいと言われるだろう
それでも、生きる糧になっている
そうでもしないと現実を生きていられなくなる。
永遠に続くような退屈で平凡な毎日
あとどれだけの繰り返すのだろう
「これが、普通で幸せなんだろうな
これが罰ならなんて軽いんだろうな」
和明は外を見る。心とは裏腹に外は希望に溢れるように
光り輝いていた。
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