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第1話
「ん…っは…ぅ……ぁ」
「…いいよ、そのまま口開いてて」
放課後の空き教室で、2年付き合ってた男の浮気現場を見つけてしまった。
お相手は僕と違って、可愛くて、美人な女の子で、あぁやっぱりって、結局女の子の方がいいのかって思うわけで。
なんとなくそんな気はしてたから、そこまでダメージがあるわけじゃない___けど、流れてくるしょっぱい水は仕方の無いものだろう。
少し前から、会える時間が減ってた。
夜に寂しくなって電話をかけると怒鳴られた。
電話の向こうで女の子の甘ったるい声が聴こえてきたからその時普段会えない理由がなんとなくわかった。
頬に伝う水を拭うのは面倒だけど、視界がぼやけてしまう。ボタボタと落ちて床に小さなシミを作っていく。
足下が覚束無い。視界もぼやけて余計にフラフラしてしまう。
だから、前方からこちらに歩いてくる人の気配に全く気付かなかった。
「わっ、ぁ、すすす、すみません……!」
「…」
ドスン、と自分より頭ひとつ分程背の高い人にぶつかった。慌てて目元の水を拭って頭を下げる。
「……あの?」
「…」
返事がなく、少し顔を上げて相手の顔を伺う……ひぇっ!!
「生徒会長さん?!」
我が校の、勉強ができて、スポーツもできて、イケメンで、恰好いいと、女子がよく騒いでるあの生徒会長さんだ。
僕みたいな平々凡々な奴とは住む世界が違う。
だから、関わりたくないし、関わることもないだろうと思っていた____のに、
生徒会長さんは僕を無表情で見下ろしている。
怖い、ひたすら怖い。
イケメンが無表情で何も言葉を発さずに、上から僕を見ている。放課後で外が少し暗いから、それも余計に。
今度は違う意味で涙がでてきた。
泣いてるところを見られるのは恥ずかしいし、生徒会長さんは怖いしで僕の頭は軽くパニックになっていた。
だから、慌てて全力の土下座をして、もと来た道を全力疾走で走り抜けてしまった。
_____浮気現場である空き教室の前を、僕は情けない声をあげながら。
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