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Please say yes:Yesと言ってほしくて5

***  いろんな意味で気持ち良かった風呂からあがり、鼻歌混じりで部屋に戻ると、ベッドを背もたれにして、床に座っていたアンディが振り向いた。 「おかえり、気持ち良かった?」  ふわりと青い目を細めて普通に訊ねられているのに、ドギマギしてしまった俺。 「あ、うん……」  心中を悟られないようアンディの目の前をさっさと通り過ぎ、やる必要のない机の上の整理をする。そんな俺の背中に声がかけられた。 「話があるのだ、和馬」 「話って……またヒモのことか?」  唐突に話を切り出したアンディを振り返りながら見ると、床に敷いてある掛け布団の上に居ずまいを正して、正座していた。  この雰囲気は、学校の階段で告白された時の空気感と似ている。多分重要な話だろうと思い、向かい側に同じように座った。 「ヒモの話よりも大切なことだ。俺の行く末の話だから」  その言葉に息を飲むと、洗いざらしの俺の頭を、子供をあやすように優しく撫でてくれる。 「お前が緊張することではないだろう。そういうトコが、いちいち可愛いのだ」 「なっ、だって!」  撫でられている手を弾こうと右手を出した瞬間、手首を掴まれて、あっという間に、アンディの胸の中に引き寄せられた。俺と同じように早い、アンディの心臓の音が耳に聞こえてくる。 「ちょっ」 「まったく。静かにしないと、また透馬が怒鳴りこんでくるぞ。この部屋は鍵がかからないんだから、しっかり注意しないと」  左腕で俺を抱きしめながら、色っぽく右手人差し指をそっと口元に当ててきた。  真っ赤な顔して、押し黙る俺を見て、 「今すぐにでも襲いたい……」    ポツリと呟いたアンディの頭を、無言で殴った。 「話が先だ、エロアンディ!」  声のトーンを出来るだけ落とし、睨んだ俺を微妙な表情して、じっと見つめ返す。 「お預け食う俺の気持ちが、どんなものか。和馬、覚えておけよ」 「俺、バカだから覚えてらんないから。あははは……」  もしかして、墓穴掘ってしまっただろうか。 「――話を戻すが、俺の行く末な」  面白くない顔をし、渋々語り出すアンディ。機嫌を直して欲しくてその首に両腕を回した俺を、しょうがないなぁという表情を浮かべ、キレイな青い瞳を細めながら見つめてくれる。 「そうやって素直に、いちゃついてくる和馬、何だか怖いぞ」  笑いながら言ったアンディの頭を先ほどよりも強く殴って、距離をとり正座し直した。 「で、お前の行く末の話はなんだよ?」  胸の前に両腕を組んで睨みながら聞く俺に、殴られた頭を撫でながら、忌々しそうに話を続けた。 「実はだな、俺は板前になりたいと思って」 「は!?」 「今日は修行するところを探すべく、下見をしていたのだ」 「えっとアンディ、つかぬことをお聞きしますが、実際に料理を作ったことがあるんですか?」 「まったくないが、どうしてだ?」  調理経験ゼロの人間が、どうして板前になりたいと言い出せるのだろう。どう考えったって、無謀としか思えない。 「じゃあ、どうして板前になりたいんだよ?」 「それはだな、国にいるときにお前のことが知りたくて、日本の文化を調べたのだ。調べていく内に日本料理の素晴らしさに心を奪われ、日本から有名な料理人を呼びよせて、いろいろ食べてみたのだ。見た目もさる事ながら、味も深く美味であった」 「はあ、なるほど」 「で、王子という身分から解放された俺は、是非とも板前になりたいと考えてな、いろいろ調べていたというワケ。今日は心配させて本当に悪かった」    ペコリと頭を下げるアンディに、俺は苦笑いをした。 「二番目の夢は、俺の作った料理を美味しいと言って食べてくれるお前が、傍にいることなのだ」 「へぇ、二番目なんだ」 「一番にすると快楽にまかせて、身を滅ぼしてしまうから。和馬のヒモになってしまう自信があるのだぞ?」  艶っぽく笑いながらにじり寄るアンディにひしひしと危険を感じ、俺は立ち上がろうとして、布団に足を引っ掛けてしまった。 「うわっ!」  倒れかけた俺の体をいとも簡単に抱きよせて、自らクッションになるアンディ。 「こういうドジ、俺の前だけにするのだぞ。他のヤツにそんな顔、見せたくはないからな」 「そんな顔って、別に俺は」 「無自覚な和馬くん、そのやっちゃったって顔がな、俺の欲望に火をつけるのが分からないであろうな」  そう言って耳たぶに、ちゅっとキスをしたアンディ。ゾクリとした感覚に固まるしかない。 「俺のこと、愛してる?」  耳元に吐息をかけられながら、低い声で訊ねられる言葉に、何と言っていいのやら…… 「あの時のように言ってくれ。俺に向かって、I love youと言ったように」 「い、言えるかよ。こん、な風に、体のあちこち、触られてた、ら、それどころじゃ、な」  息絶え絶えの俺を残念そうに離してから、ゆっくりと起こしてくれた。 「俺のこと好き?」 「イ、YES……」 「どれくらい?」  差し出された右手を、俺は躊躇いなくぎゅっと握りしめた。 「言葉に出来ないくらい……」 「和馬っ!!」    真っ赤な顔して渋々言う俺に、長い金髪を振り乱しながら圧し掛かるアンディの体を、強く抱き締めた。  愛しい重さに目を閉じると、重ねられる唇。胸が張り裂けそうな程、ドキドキしていて苦しい。角度を変えて責められる口内にアンディの想いが、どんどん流れ込んでくるようだ。 「キスだけでトロけたような顔して。もっと気持ちのイイこと、俺の手でしてやるぞ」 「も、いいからっ。十二分ににお前の気持ち、分かったし!」  俺の服を脱がしにかかっていた、アンディの手がピタリと止る。 「いいから、ね。つまり、ヤってもいいってことだと受け取るぞ」 「違っ! 逆だってば」 「いやぁ、日本語ってファンタステック。いろんな意味にとれるから」  意味深に笑ってから止まっていた手をいそいそ動かし、履いていたズボンと一緒に下着がズリ下された。硬直している下半身を見られ、恥ずかしさで顔をもっと赤面させるしかない。 「み、見るなよ!」  声を上擦らせて、隠そうとした俺の両腕を素早くパッと掴み、思いきり圧し掛かる。 「シーッ! んもぅ和馬、興奮し過ぎだぞ。声が大きいって」 「うっ……」  慌てて口を噤んだ俺。恥ずかしさもあったが、それよりも――腰骨に当たるアンディのアレが、俺よりも大きくて、スゴいことになってる。  外人、恐るべし……ってコレ、多分俺の中に挿れるんだよな? ……む、無理! 絶対無理! 出すことには長けてるけど、挿れることに関しては、受け付けられないに決まってる!  赤くなったり青くなったりしてる俺の顔を、不思議そうな目をして見つめた。 「どうしたのだ、和馬?」 「ひっ! えっと恥ずかしくて……。その電気、消してくれないかな、と」  しどろもどろ言う俺に、クスッと笑って首を横に振る。 「消さない代わりに、こうすればいいのだ」  掴んでいる俺の右手を目元に左手を口にあてがう。確かに暗くなったよ、俺だけな。 「恥ずかしいって言ってんだろ、電気消せよ」 「一歩譲ってやってるのに、ワガママだな和馬。俺はお前のすべてが見たいのだ、隠してくれるな」  優しく呟くといきなり俺自身を口に含み、ゆっくり上下にスライドさせる。 「止めろっ……。お前、何やって、んっ!」  唾液を滴らせながら、俺自身を咥えているアンディの姿を見てるだけで、胸がきゅっとなった。好きなヤツにされるのって体だけじゃなく、心も満たされていく―― 「和馬の、どんどん大きくなってる。気持ちイイ?」  先端を丹念に舐めながら、上目遣いで聞いてくるアンディ。美味しそうに舐めあげる水音が室内に響いて、淫靡な気分に拍車をかけた。 「ワザと、そんな、こと……聞く、んっ、じゃねぇよ。分かってる、クセに」  声を押し殺して、やっと言った俺をキレイな青い瞳で見つめてから、 「じゃあ、ヘヴンにイカせてあげる。もっと感じて……」  俺の根元をしごきながら口と舌を使って、どんどん俺自身を高まらせる。さっき風呂で一発抜いてるというのに、アンディのテクニックに翻弄されてもう―― 「アンディ、もうヤバい……。イキそう、なんだけど」  そう告げてるのに離す気配はなく、先ほどよりもどんどんスピードを上げる。 「も……ダメ、イクっ!」  弓なりにしならせた俺の腰をしっかり抱きよせて、すべてを受け止めたアンディ。体中が快感でみち震える。重だるいクセに、妙な幸福感があった。  息を切らし、くたくた人形になってる俺に、 「ご馳走様でした和馬。イク時の顔、今までで一番、良かったぞ」  明るい蛍光灯の下、しっかり見られたのだろう。マジでハズカシイ! 「さて、と。もう一つ、確認したいことがあってな」  そう言って右手中指を自分の口に突っ込み、ニヤリと笑う。 「何の確認だよ?」 「俺の最終目標、かな」  言い終わらない内に挿れちゃいけない蕾に、細長い中指をスルスルっと入れられた。 「ななな、何の目標なんだよ? そんなトコにあるワケないだろ、バカアンディ!」 「俺の独自の研究なんだが、あるらしいのだ。和馬、もっと力、抜いてくれないか?」 「無理、絶対無理! モゾモゾするだけで、気色悪い……」  気がつけば、いつの間にか指が2本になってて、医者の様に丹念に中を調べていく。 「むー、指の長さが足りないのか? 厄介だぞ」 「もうそろそろ、げんか……」  限界と言おうとした瞬間、とある部分を擦った指先に、体の芯が疼くような感覚がした。 「和馬?」 「何でもない、早く止めてくれ」 「止めてくれって言いながら、どうして和馬の大きくなってるのだ?」 「しっ、知らない!」 「隠しても無駄、確かココだったかな?」  感じたところを指先で優しく刺激され、思わずのけ反った俺。声を出しそうになり、慌てて右手で口を押さえた。 「俺のを挿れて擦ったら、どうなるのかな……」  低い声でそら恐ろしいことをアンディが言ったので、激しく首を横に振って拒絶した。気持ちは拒絶しているというのに、体は逆にアンディを求めるように、ヒクヒクしている。  ヒクついてるアソコと俺自身を弄りながら、左胸に顔を埋め赤い舌で乳首を刺激された。 「んんっ、くすぐったい……」  それを止めさせるべく、アンディの頭を右手で強引に押して体から外すと、上目遣いで睨んでくる。 「くすぐったいなんて、嘘ばっかり。しっかり乳首が勃っているぞ」 「これはっ、お前があちこち触るから、連鎖反応というか……」  説得力のない俺の言葉に、プッと吹き出して笑う。 「涙目で赤い顔しながら言われても、俺は騙されないからな。強がりばかり、いつも言うんだから」 「そんな、こと……」 「そういう素直じゃないトコにも、心底惚れているのだぞ。可愛いったら、ありゃしない」  音を立てる様なキスを俺の頬にしてから、おもむろに立ち上がりパチンと電気を消した。暗闇の中で、アンディが服を脱ぐ音が聞こえる。  これから行われることがブワッと頭の中によぎり、いそいそ起き上がって、アンディに背を向けた俺を、後ろから優しくふわりと抱きしめてくれる。直に触れるアンディの肌に、妙な安心感があった――心地良い体温 「ね、俺の触って……」  俺を振り向かせると右手をそっと取り、アンディ自身を握らせる。 「和馬のだぞ、どうだ?」 「どうだと言われても、えっと……」 「手、動かして。気持ち良くして」 「う、うん」  ドキドキしながらアンディ自身をぎゅっと握り、ごしごししてあげた。視線をどこに持っていけばいいか分からず、そっとアンディの顔を見ると、俺の顔をしっかりガン見しているではないか! 「手、止めないで。そのまま続けて」 「はい、ぃ」  止まりそうになった俺の手首を掴み、激しくスライドさせる。 「あのさ、気持ち良くない、かな?」  俺の顔をじっと見つめるアンディに、恐る恐る訊ねてみた。なぜかずっと難しい顔をしていて、ちっとも気持ち良さそうに見えないからだ。 「気持ちイイぞ、とても。いつでもイケる自信ある」 「そんな感じに、見えないんだけど」 「好きなヤツに弄られて、気持ち良くないヤツがいたら、是非とも見てみたいものだ。そんな感じに見えないのは、他の事を考えていたから」  そう言って顔を寄せたと思ったら、触れるだけのキスをした。 「次はどうやって、和馬をイカせようかなぁと思って。俺の希望は、一緒にイキたいんだけど」  クスクス笑いながら俺自身を手に取ると、同じように扱き始めた。 「お前の希望なんか、聞いてないし……んっ!」 「和馬の触ったばかりなのに、もうヌルヌルしてる。さっきのマッサージ、効いたのか?」 「そう言う事、言うな。バカ……」  俺が顔をしかめると、同じようにアンディも苦しそうに顔をしかめた。 「さすがにこれ以上は、持たなくなってきたぞ。和馬は?」 「お前のテクで、今にもイキそうだ。素直に、認めてやる、よ」    息も絶え絶え答えると、強引に俺に覆いかぶさりながら、 「一緒に、イクぞ。和馬……」  そう言われたのは、しっかりと覚えている。だけど、実際一緒にイッたのかすら分からなかった、気持ち良過ぎて。  頭の中がぼんやりしていて、現実に戻れないでいる自分がいる。気だるい心地良さを手離したくなくて、アンディの体にしがみ付いた。 「和馬、大丈夫?」  心配そうな顔してアンディが聞いてきても、答えるのが億劫だった。 「和馬、あのさ」 「…………」 「ワン モア タイム プリーズ!」  その言葉に俺の思考が、一気に覚醒する。 「ふざけんなっ! 4回もイケるワケないだろう」 「えっ? 4回?」 「あ……」  しまったという顔をしたら、すべてを察知したアンディが、してやったりな顔をして、俺を覗きこむ。その顔のムカつく事、この上ない。 「俺が風呂に入る前、布団に入っていたのは、そういう事だったのだな。今夜を楽しみにして、コッソリと抜いていたのか」 「違っ、ここではヤッてないし」 「じゃあ、どこでヤッたのだ? ん?」  歯切れの悪い俺に突っ込むアンディ。困っている状況なんだけど、この感じがえらく懐かしくて、実は嬉しかったりした。 「そんな事聞くな、エロアンディ」  いそいそ布団の中に、逃げ込んだ俺。追いかけるようにアンディも布団に入ってきた。そして俺の体をぎゅっと抱きしめる。 「和馬、俺今すっごく幸せ。夢見てるみたいだぞ」 「そうか、良かったな」  アンディの温もりが、俺を眠りに誘う材料になってきた。思わずうとうとしてしまう。 「帰国してもお前と過ごした夜の事、絶対に忘れないから。だからお前も、忘れるでないぞ」 「……分かった、忘れ、ない……から」  何で帰国という言葉が、出てきたんだろう。そう思ったのも束の間、あっさり俺は爆睡してしまったのである。  朝、目覚めたら一緒に寝ていた、アンディの姿がなかった。

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