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Please say yes:Yesと言ってほしくて4

*** 「分かってるわね。アンタは下で寝て、アンドリュー王子はベッドに寝てもらうのよ」  アンディがお風呂に入ってる最中、俺の部屋に敷かれる布団。ウチには客間なんてないから、当然なんだが…… 「分かってるよ。何度も同じことを言わなくてもさ」 「アンタが粗相するのが目に浮かぶから、念には念を入れてんの。しっかりしてちょうだい!」 「はいはい」    母親はベッドのシーツ交換を終え、腰に手を当てながら呆れた目で俺を見る。 「喧嘩しないで仲良くしてね。貴方たちが言い争う声を、透馬が聞いてるんだから。王子様に気を遣わせるなんて、もっての外だわ」 「分かった、もう喧嘩はしないから」  仲良くしてねの言葉に一瞬反応して、変な顔をしているであろう俺を一発殴ってから出ていく母親。念には念を入れたらしい。 「アンディと一晩、一緒って……」    ふと、ふたりきりになったことを、ぼんやりと思い出す。  学校の理科準備室でアイツにお茶を口移しされ、そのままキスをされた。俺の顔をガッチリ両手でキープしていたので、逃げることが出来ずにいた。  アンディの唇が俺の唇全体を包み軽く離しながら、そっと唇を舐める。そのくすぐったい感じに声を上げた瞬間、舌が入ってきて絡め取られた。お互いの唾液が混ざり合い、イヤらしい音が室内に響く。それだけで俺は、すっごく感じてしまい―― 「わーっ!」  思い出しただけで大事なトコに、ばーっと血がたぎってしまって大変なことになった。こんなトコ、アンディに見つかったらマジでヤバい。  慌てて敷いてある布団に潜り込んだら、部屋のドアがノックもなしに、いきなり開け放たれた。 「ちょっと、何ひとりで騒いでんだよ? かなり迷惑なんだけど」 「ひっ!?」  頭を掻きむしりイライラした様子の透馬を見て、俺は顔を引きつらせた。 「兄ちゃん、俺は受験生なんだからな。気を遣って、静かにしてもらわないと困るよ。まったく」 「ご、ごめん」 「兄弟喧嘩とは、相変わらず仲が良いな」  笑いながらアンディが部屋に入ってきた。どうしてこのタイミングで、風呂からあがったんだよ……。しかもどうしてパジャマの前をはだけさせ、濡れた長い金髪をバスタオルでカッコよく拭いてるんだ。  それだけで無駄にドキドキして余計俺自身の収拾が、つかなくなったじゃないか。 「アンドリュー王子からも、注意して下さいよ。兄ちゃんがひとりで騒いで、勉強の妨げになる様なことをするんです」  アンディは複雑な顔をした俺をチラリと一瞥して、アヤシげに微笑む。 「透馬がちゃんと勉強できるよう、直々に俺が和馬の口を塞いでやるから安心しろ。きっと捗るであろう」 「わぁ、助かります。お願いします!」  アンディの言葉に大喜びの透馬。一体ナニで、口を塞ぐつもりなんだよ…… 「ところで、ドライヤーを借りたいのだが」 「ああ、それなら洗面台のトコにあったような」 「分かった、借りるぞ。このあと和馬が風呂に入るように、伝言を頼まれたのだが」  髪の毛を拭いていたバスタオルを首に掛けて、俺の顔をじっと見るアンディ。そのキレイな青い瞳にすべてを見透かされそうで、思わず目を逸らす。 「俺、もう少し休んでから入る。透馬、先に入ってくれ」 「じゃあ、お先。アンドリュー王子、一緒に下に行こう?」  透馬の誘いに、ふたつ返事でOKして部屋を出て行く。その後姿を見て、安堵のため息をついた瞬間だった。 「和馬、体調悪いのか?」  閉めかけていた扉から顔を出し、俺の様子を探るように見つめた。思わず握ってた布団を顔の半分まで引き上げて、上目遣いでアンディを見る。  動きたくても、下半身の事情で動けないのだ。まったく…… 「お前を捜すのに、ちょっと疲れただけだから。大丈夫!」 「そうか。じゃあ和馬が風呂からあがったら、疲れが取れるマッサージしてあげるぞ。楽しみにしておけ」  ウインクしながら右手親指を立て、爽やかに出て行った。  どんなマッサージするつもりだよ。イヤな予感しかしない。イヤな予感と思いつつも、どうしてアソコがより元気になっているのか…… 「心中複雑だよな、本当に――」  どう考えても、キケンな夜が俺を待ち構えているのは事実だった。

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