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Please say yes:Yesと言ってほしくて4
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「分かってるわね。アンタは下で寝て、アンドリュー王子はベッドに寝てもらうのよ」
アンディがお風呂に入ってる最中、俺の部屋に敷かれる布団。ウチには客間なんてないから、当然なんだが……
「分かってるよ。何度も同じことを言わなくてもさ」
「アンタが粗相するのが目に浮かぶから、念には念を入れてんの。しっかりしてちょうだい!」
「はいはい」
母親はベッドのシーツ交換を終え、腰に手を当てながら呆れた目で俺を見る。
「喧嘩しないで仲良くしてね。貴方たちが言い争う声を、透馬が聞いてるんだから。王子様に気を遣わせるなんて、もっての外だわ」
「分かった、もう喧嘩はしないから」
仲良くしてねの言葉に一瞬反応して、変な顔をしているであろう俺を一発殴ってから出ていく母親。念には念を入れたらしい。
「アンディと一晩、一緒って……」
ふと、ふたりきりになったことを、ぼんやりと思い出す。
学校の理科準備室でアイツにお茶を口移しされ、そのままキスをされた。俺の顔をガッチリ両手でキープしていたので、逃げることが出来ずにいた。
アンディの唇が俺の唇全体を包み軽く離しながら、そっと唇を舐める。そのくすぐったい感じに声を上げた瞬間、舌が入ってきて絡め取られた。お互いの唾液が混ざり合い、イヤらしい音が室内に響く。それだけで俺は、すっごく感じてしまい――
「わーっ!」
思い出しただけで大事なトコに、ばーっと血がたぎってしまって大変なことになった。こんなトコ、アンディに見つかったらマジでヤバい。
慌てて敷いてある布団に潜り込んだら、部屋のドアがノックもなしに、いきなり開け放たれた。
「ちょっと、何ひとりで騒いでんだよ? かなり迷惑なんだけど」
「ひっ!?」
頭を掻きむしりイライラした様子の透馬を見て、俺は顔を引きつらせた。
「兄ちゃん、俺は受験生なんだからな。気を遣って、静かにしてもらわないと困るよ。まったく」
「ご、ごめん」
「兄弟喧嘩とは、相変わらず仲が良いな」
笑いながらアンディが部屋に入ってきた。どうしてこのタイミングで、風呂からあがったんだよ……。しかもどうしてパジャマの前をはだけさせ、濡れた長い金髪をバスタオルでカッコよく拭いてるんだ。
それだけで無駄にドキドキして余計俺自身の収拾が、つかなくなったじゃないか。
「アンドリュー王子からも、注意して下さいよ。兄ちゃんがひとりで騒いで、勉強の妨げになる様なことをするんです」
アンディは複雑な顔をした俺をチラリと一瞥して、アヤシげに微笑む。
「透馬がちゃんと勉強できるよう、直々に俺が和馬の口を塞いでやるから安心しろ。きっと捗るであろう」
「わぁ、助かります。お願いします!」
アンディの言葉に大喜びの透馬。一体ナニで、口を塞ぐつもりなんだよ……
「ところで、ドライヤーを借りたいのだが」
「ああ、それなら洗面台のトコにあったような」
「分かった、借りるぞ。このあと和馬が風呂に入るように、伝言を頼まれたのだが」
髪の毛を拭いていたバスタオルを首に掛けて、俺の顔をじっと見るアンディ。そのキレイな青い瞳にすべてを見透かされそうで、思わず目を逸らす。
「俺、もう少し休んでから入る。透馬、先に入ってくれ」
「じゃあ、お先。アンドリュー王子、一緒に下に行こう?」
透馬の誘いに、ふたつ返事でOKして部屋を出て行く。その後姿を見て、安堵のため息をついた瞬間だった。
「和馬、体調悪いのか?」
閉めかけていた扉から顔を出し、俺の様子を探るように見つめた。思わず握ってた布団を顔の半分まで引き上げて、上目遣いでアンディを見る。
動きたくても、下半身の事情で動けないのだ。まったく……
「お前を捜すのに、ちょっと疲れただけだから。大丈夫!」
「そうか。じゃあ和馬が風呂からあがったら、疲れが取れるマッサージしてあげるぞ。楽しみにしておけ」
ウインクしながら右手親指を立て、爽やかに出て行った。
どんなマッサージするつもりだよ。イヤな予感しかしない。イヤな予感と思いつつも、どうしてアソコがより元気になっているのか……
「心中複雑だよな、本当に――」
どう考えても、キケンな夜が俺を待ち構えているのは事実だった。
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