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第2話

期待はしていなかったが、やはり朝になっていきなり引越しが無くなるなんて筈も無く、父さんと俺は隣町に引越した。 「はぁ…父さんの転勤なんだから父さんだけが行きゃ良かったのに」 「仕方ないだろ、お前を一人になんてさせたくないんだよ」 「…」 俺が小さい頃に母さんを亡くして父さんは今まで一人で俺を育ててきた。再婚もせず誰に頼ることもせず、文句を言ってる所でさえ見たことはなかった。多分凄く辛かったと思う。それが分かるからそれ以上俺は父さんに何も言わなかった。 俺にとって父さんは一番大切な存在だ。 でも、それと同じくらいに実月も大切だった。 だから、隣町と言えど離れるのは避けたかった。 荷解きをしながら新しい学校の事よりも実月の事が気掛かりでどうしようもなかった。勿論、連絡はした。実月も「仕方ないね」って言ってはくれた。が、どっちの意味で言ったのか俺には分からなかった。……信じたい、俺は実月を。 「葵ー、弁当買ってきたからお昼にしよう」 「分かった」 手を止めテーブルに着き、父さんと同時に「いただきます」と手を合わせ食べ始めた。基本食事中に会話はしないのだがふと父さんを見ると何か話したそうにこっちを見ていた。 「…なに?」 「いや、あのさ……」 「何だよ」 言いづらいのか目を逸らしている。 何だか嫌な予感がした。 「明日から葵が通う学校なんだけど」 「うん?」 「男子校なんだ」 「へー、別にそーゆーのは気にしないよ俺」 「そっか、なら良かった。 あと、その男子校、全寮制なんだ」 「…はい?」

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