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第7話

 高月先輩はぼくのことを知っていた。 「万寿寺(まんじゅじ)の住職のお孫さんでしょう? ひとの心を読むことができる」 「読めません……そのひとが抱えきれなくて外に漏らしてしまった感情に反応するだけです」  そう説明しても彼は「似たようなものじゃないか」と言って気にしない。 「そっか、わたしが思い悩んでいることが外に垂れ流されていたわけだね。それでお人よしな君が声をかけてくれた、と」 「ええ、まあ……」  ぼくと高月先輩のやりとりを隣にいた少年もぼんやりと見つめている。ぼくが彼のことを指摘すると、高月先輩はおや、というような表情で呟いたのだ。 「……さすがだね」 「――ハルミ。やっぱりこの子、俺のことみえてた?」 「え?」  みえる? ってどういうことだろう。それに、彼は高月先輩のことを名前で呼んでいた。親しい間柄なのだろうか?  思わず考え込んでしまったぼくの目の前に、悪戯っぽい少年の笑顔が迫ってきた……と身構えていたら、するりと彼はぼくの身体をすり抜けてしまっていた。  何だ? いまの。それじゃあまるで…… 「ゆ、幽霊?」  愕然としたぼくに、高月先輩はうん、と嬉しそうにうなずく。 「弟なんだ」  くすくす笑って、高月先輩は教えてくれた。  生まれたころから傍にいて、一緒に成長してくれているという、死産した双子の弟、ミハルのことを。

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