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第3話

「真島、オマエ、オレのこと好きだろ」 好…好…え? 「…何言ってんの。なんでオレが…」 オレを見つめる灰谷の目は真剣で。 で、オレが大好きな顔だった。 スネたような甘えたような、でも、自信にみちた…顔。 「…何言ってんだよ」 そう返すのが精一杯で。 ああ…のどが渇く。麦茶を飲んだ。 「それちょうだい」 灰谷はオレの手からグラスとスマホを取り上げるとテーブルの上にのせた。 そして脇の壁をトントンと叩いてこう言った。 「この部屋って壁薄いかな」 「はあぁ?」 「ま、いっか」 腕をつかまれたと思ったら軽く足払いをかけられ、ベッドの上に押し倒された。 気がつけば灰谷の顔が息もかかるほどの距離にある。 なんなんだよコレ。 熱を帯びた灰谷の目がオレを見つめる。 顔が近い。はずかしい。ダメだ…赤くなる。 灰谷のカラダを押しのけ、後ずさる。すぐにカベに背中がくっついた。 灰谷はオレの方にジリジリと近づいてくる。 「本当にイヤならやめる。どうする?オレ、死んだんだろ」 「…死んだとは聞いてない。意識不明の重体だって言ってた」 「そっか。じゃあここにいるオレは生死をさまよう霊体なわけだ。霊体はセックスできんのかな」 セ…セックス? 「で…できないんじゃないの」 「弱ったな。せっかくオマエんとこ来れたのに」 って、そんなに見つめながら言われてもオレ…オレ…。 次の瞬間、オレは生暖かいものにふわりとカラダごと包まれた。 え?何?何何? なんなのコレ。 灰谷がオレを抱きしめてる? え?え?ウソだろ。 灰谷の腕にぎゅっと力が入る。 カラダがさらに密着する。 いや…待って…。 カラダが熱くなる。 心臓がバクバクと音をたてる。 うわ~なんだコレなんだコレ。 熱い熱い……熱いよう。 離して離して……死ぬ……。 灰谷はギュッと力を入れて離さない。 灰谷…灰谷のカラダも熱い…。 鼓動が…聴こえる。 オレの?灰谷の? 灰谷…灰谷…灰谷…。 オレの中に封じこめていた灰谷への感情があふれ出した。 灰谷のカラダを、熱を、感じとりたくて、灰谷の背中に恐る恐る手を回す。 応えるように灰谷がオレにカラダをこすりつける。 あれ…なんだ…気持ち…イイ。 カラダ…人のカラダ…灰谷のカラダ…気持ちイイ…。 灰谷…。 ああ…気持ちイイよ。 灰谷…灰谷…灰谷…。 灰谷はゆっくりカラダを離すとオレの右手をとって自分の左胸の上にあてさせた。 「…わかんだろ、オレの気持ち」 心臓がバクバク言ってる。 「オレのカラダの隅々まで、見て、触って、感じていいんだぜ。したいだろ」 顔から火が出そうだ。 「…なんで、そんなこと言うの?」 「オレがそうだから」 「え?」 「オマエのこと、ずっと見てたから」 思わず見た灰谷の顔は今まで見たことがないくらい優しくて、そして色っぽかった。 「見てるだけでよかったけど。オマエのこと、真島のカラダごと見て、触って」 灰谷がオレの左胸に手をあてる。 「感じ倒したくなったから」 心臓の鼓動がさらに跳ね上がる。 熱い。 カラダ中に血がかけ巡って熱い。 「…ウソだ。灰谷はオレのことなんて全然見たことなかった」 「つうかバカだなオマエ。オマエがオレを見てない時に見てるに決まってんじゃん。バレちゃうだろ。 でも…真島がいつもオレのことを見てるのはわかってた」 わかってた?わかってたの?本当に灰谷もそうだったの? 瞬間、涙がこみあげた。 「女子か!泣くなよ」 つうかなんなのこれ。オレたちお互い好きだったってこと?両想いってやつ? あれ?じゃあ中田がオレのこと見てたってのも本当のことなんじゃないの? 「おい、こっち見ろ。他のこと考えんな」 「なんでわかったの?」 「わかるわ、それぐらい。どんだけオマエのこと見てたと思ってんだ」   灰谷、本当にオレのこと…。嬉しい。嬉しいよ。 灰谷がオレの両肩に手をおいた。 「ごめん。我慢できねえ…キスしていい?」 灰谷の顔はちょっと切羽詰まったように見えた。 オレとそんなにキスしたいの。 強く求められているのを感じたオレの顔はさらに赤くなった。 熱い。 「…聞くなよ」 「じゃあ、聞かない」 灰谷はチュッと軽く唇を合わせてきた。 あ、やわらかい。 心臓が踊る。 チュッチュッと合わせて、唇が離れた。 あれ、もう終わり? 知らずに閉じていた目を開ければ、灰谷がオレの顔を見つめていた。 「オマエ、エロいな」 そういう、灰谷の顔もエロかった。

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