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第5話 悩む桜井くん
桜井side
桜井はふと気づく。
いつも椿は目立たない。
椿銀行の跡取りのはずだ。
昔、パーティーで会ったときは明るく人懐っこく、笑顔の絶えない奴という印象だった。
「何か椿印象変わったな。」
幼馴染の葛木礼は桜井にボソッと耳打ちをする。
「あぁ、何か暗くなった。」
教室で見た椿の印象は幼い頃より暗く、目がどこを捕らえているのかもわからない感じだった。
「四月一日。」
そんな彼はいつも1人の男子しか名前を呼ばない。
どこの家の人間かもわからない。
「四月一日ってどこの家だ?」
桜井はそう葛木に聞いた。
「父親は銀行勤めらしいよ。」
葛木はつまらなさそうに言う。
「そうか」
椿の情報を知りたいと思った桜井は四月一日に声をかけた。
「洋の事知りたい?」
「あぁ…。」
四月一日は渋る。
「本人から聞きな。」
四月一日は何も言わない。
桜井はそれから気になって椿を見るようになった。
きっと良い尻だなと…。
しかしこれと言って接触がなく、月日が過ぎ…。
「椿の尻はきっと良い尻だ。」
桜井は体育の時間に葛木へそういうと呆れたように読書をしていた彼が眉間にシワを寄せる。
「しつこいぞ、気になるなら触りに行け。」
「だって、一回だけでは足りない。嫌われたら次がないじゃないか。」
「だから歴代の彼女に嫌われるんだろ。」
葛木はため息をついた。
「寝る」
そういうと桜井は寝転がった。
「せいぜい誰かに踏まれるなよ。」
そして、この後顔面に椿が乗ることを彼はまだ知らない。
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