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それぞれの過去~真澄×龍之介編~【5】

   真澄の腰がゆるゆると動くたびに龍之介の足の間で幼い性器がふるふると揺れて、半透明でぬめりを帯びた蜜を溢れさせ、雫が飛び散り腹部や太股を濡らしていた。  さっきから尿やら先走りやらでどろどろに汚れた龍之介の体に触れているが、潔癖であるはずの真澄はそれに対する嫌悪感は不思議と全くといっていいほどなかった。  顔中を体液でぐしゃぐしゃにしている龍之介にキスをすることにも躊躇いはなかった。  龍之介が真澄にとって特別な位置づけの存在であることは、彼に男である自分を拒絶されても、やはり変わることがなかったということだろう。  日本を離れている間もずっと龍之介の事だけを想い続けてきたのだ。  離れていても変わらずに愛していたし、愛されたいと願っていたのに……。  真澄はゆるゆると腰を動かしながら、胸を弄っていた手を龍之介の下肢へと滑らせた。  彼自身が出した尿や先走りの液に塗れて、足の間でそそり立って揺れている汚れた陰茎を右手で掴んで握りこんだ。  弾力があり芯を持っているそれの感触を指の腹でぐにぐにと押して確かめる。 「や、あ、あ、んん、ん、んぅ」  性器を握りこまれて弄られて、こちらを見ないようにきつく瞼を閉じたままの龍之介が反応して、小さく喘ぎを漏らした。  乳首への愛撫で感じたせいか龍之介のそれは、幼いながらも固く育ち勃起して反り返り、自己を主張している。  体内に納めたままの肉棒をずるずると緩く動かし、腰の動きに合わせて、龍之介の陰茎を右手で全体で丁度いい力加減で包んで上下に動かして扱いてやる。  乳首と陰茎を弄られれば、龍之介は感じて素直に反応を返してくる。  後ろだけでいけるようになるまでには大分時間と行為を繰り返し経験が必要になるだろう。  慣れない始めのうちは、前を扱いてやって射精を促してやり、連動させて後ろでの性感を徐々に高めてゆき、ソレが快楽であるという事を憶えこませて、誘発させてやればいいだろうか。  男同士はおろかちゃんとした女とも性的な行為をした事がなく、特に教えられる事もなかった真澄は自分でそう考えて龍之介を抱いていた。    はっきりと龍之介に拒絶されたが、やはり心と体は別々なのだろう。  拒絶した相手にこうやって前を扱かれて、乳首を弄られて感じて喘いでいる龍之介を見てそう思った。  だから体に快楽を植えつけて覚えこませれば少なくとも彼の肉体だけは自分のものにする事ができる。  心が手に入らないのであれば、いっそ繋げられるのが体だけでもいい。  せめてもの悪あがきだ。  真澄は心から気を許した相手や愛しているもの以外に触れると強い嫌悪感を抱く潔癖症で、体と心が深く繋がっている。  心で受け入れられないものは体も受け付けない。  だから心と体がバラバラである多くの人間を蔑んでいた。  特に大概の男は好きでもない相手と平気で寝ることができるような生き物らしい。  自分の父親の愛人の数を見ればよくわかる。  自分は父のようにはなりたくないと思いながら性別を偽って生きてきた真澄は、自分に気に入られて、金を得ようと上辺だけいい顔をする、ミリア以外の人間を、だんだんと疎ましく感じるようになっていった。  周囲にいる人間に敬われながらも、自分とミリア以外の人間を信用する事ができずに、ずっと孤独だった。  あのまま一人きりでいたらまだ心が弱かった真澄は生きていられなかったかもしれない。  ミリアが常に真澄のそばにいて支えになってくれたからこそ今の自分がある。  ミリア以外の誰かに必要とされたい、愛されたいと渇望していた幼い頃の真澄の前に突然現れた一人の活発そうな少年。  天上院家の庭園にある植木にぽっかりとできた穴は裏の門側の植木から邸宅内へと続いており真澄が良く一人で遊んでいる、秘密の花園へと繋がっていた。  好奇心が旺盛な彼のことだ。    どこかへと続いている子供が這ってやっと通り抜けられるほどの抜け穴を見つけて、何処に繋がっているのか確かめたかったのだろう。  そのトンネルを潜り抜けて、葉っぱや枝を体のあちこちにくっつけた姿でぐしゃぐしゃの頭で飛び出してきた。  いきなりの来訪者に最初のうちは戸惑っていた真澄だったが、屈託なく笑う龍之介に心を溶かされて打ち解けることができ、すぐに仲良くなった。    その日、真澄にミリア以外で初めての友達ができた。  龍之介と仲良くなり度々会って話をして、ままごとで遊ぶようになって、しばらくしたある日。  真澄は両親と演劇を見に行く約束をして、それがだめになり、一人で離れの庭園にある秘密の花畑で花冠を作って遊んでいた。  赤髪の少年が秘密の花畑に会いに来てくれるのをいつもどうりに待っていた。  いつもの時間に植木をボキボキと盛大に折り散かしながら例のトンネルを潜り抜けて、龍之介が真澄の前へと飛び出してきた。  いつもままごとをする時は、龍之介がお父さんの役で、真澄がお母さんの役、たまに持ち歩いていたクマのぬいぐるみを二人の子供にして遊んでいた。 「パパもママもわたしのこときらいみたい」  父親も母親も自分より仕事の方が大切で、会ってさえくれない事を、花冠を作りながら、龍之介に話した。  いつもお父さん役をやらされていたからか、龍之介は満面の笑みを浮かべると、真澄の額にキスをして、 「じゃあ、俺が本当の家族になってやる!」  と言ってくれた。  それを聞いた真澄はつぶらな鳶色の瞳を見開いて、しばらくして、眦から大粒の涙を零した。  龍之介の笑顔が堰を切ったように溢れ出した喜びの涙で滲んで霞み揺らめいていた。  急に泣き出した真澄を見て龍之介が慌てている。  ――たまらなく嬉しかった。  自分はもう一人じゃないと生まれて初めて心から思えた。  ミリア以外の人間を初めて信じてみようと思った。  白い歯を見せながら屈託なく笑う龍之介のあの少年らしい無邪気な笑顔が好きだった。  あの時の約束があったからこそ、龍之介と離れ離れになった後も、真澄はそれを支えにして、病弱だった体を鍛え、手術にも耐えられる強さを身につけることができた。  それは確かだ。  その場しのぎに吐いた龍之介の嘘だったとしてもその約束のおかげで今の自分がある。  それは真澄もわかっていた。  頭では理解していても、やっとの想いで、再会した龍之介にぶつけられた残酷な言葉。 『女だと思っていたから約束したんだ。  だから、約束は無効だ』  拒絶された事に対しての、絶望に失望、そして狂おしい程の愛情が沸々と真澄の内部で、ぐちゃぐちゃになり混沌としていった。  捩れて、歪になった想いはすべて龍之介の肉体へと向けられる。  殺したいほど憎らしいのにそれ以上に彼の事をこんなにも愛してしまっている自分にも苛立ちを憶えた。  嫌ってしまえれば、そのほうが楽なのに……  真澄はそうも思いながら、目の前で顔中をぐしゃぐしゃにしながら、快楽と苦痛に喘いでいる龍之介の首筋に顔を埋める。  そのまま彼の首筋にかじりついて吸い、所有の証を刻み付けても、ただ空しかった。  自分の一方的な想いを彼にぶつけているだけだ。  ずっと想い続けていた相手と、繋がっているのに、感じるのは摩擦による、生理的な快楽だけだった。  自分で自慰をしているのと変わらない。  こんなのは、龍之介の肉体を使って、自分を慰めているだけだ。  それをわかっていて、握り締めた龍之介の陰茎を扱く手の動きを速めて、腰を動かした。  真澄の手の平に包まれた龍之介の性器はビクビクと脈打ち、先端からだくだくと、半透明の液を噴出して、ぐっしょりと濡れていた。        先走りの液が尻の狭間を伝い、後孔にまで垂れてきて、潤滑液がわりになっているせいか、だいぶスムーズに出し入れすることができるようになってきた。  前を扱かれて、体内にあるしこりを擦られて、悪い熱に犯された時のような浮遊感に見舞われ、真澄が長く太い肉棒で龍之介の体内を突くたびに堪えきれない喘ぎが漏れた。 「はあぁっ! あぁっ! ふあ、は…んんっ」  中がじんじんとして、真澄の手の平に握りこまれ、絶妙な圧をかけられ前を扱かれる快感に我を忘れかけていた。  自慰すらあまりしたことがなく性的なことに興味がなく、無知だった龍之介は、初めて感じる強すぎる快感に、何がなんだかわからなくなり、ただ体内でくぐもっている熱を吐き出したくて、真澄が扱く手の動きに合わせて、無意識に腰を動かしていた。 「うぅっ、あ、んんっ! んはぁ…あっあぁっ!」  だんだんと速くなる真澄の腰の動きに合わせて、龍之介の小柄な体が揺さぶられて、彼自身のネクタイで拘束された手首が擦れて赤くなっていた。 「ふあううっ! あああっ!」 「龍之介君」  真澄は、龍之介を見つめ、不意に名前を呼んだ。  内側からも外側からも、ぼろぼろに傷を負わされているのは、龍之介の方なのに、今は真澄の方が苦しげに眉を顰めて辛そうな顔をしていた。  真澄は空しさを振り払うように、腰の動きを速めて龍之介を揺さぶった。  ギリギリまで抜けかかった肉棒を、根元まで突き入れてまた引き出してを無心に繰り返す。  気持ちがまったく通じ合っていない、体だけの繋がりは、今では、ただ空しいだけだった。  けれど、彼が自分以外の誰かと付き合い、こういった行為をするようになることは、絶対に許容できない。  だから、これからも幼い頃にした約束を理由に、彼を縛り付けて、こうやって抱くと思う。  だんだんと強くなる突き上げと、前を扱く手の動きに合わせて龍之介が喘ぎ、強すぎる苦痛と快楽に身悶えていた。 「うあ、ううっ! ふあぁっ! あぐ、ぅうっ! 」 「は……龍之介君、気持ち良いだろう?」  龍之介が喘いでいるのを見て真澄が体内に納めたままの肉棒を体内にある快楽のしこりめがけて強く突き上げた。 「うああああっ! ひぃ……ひいいっ! ああっ! ううっ!」  前立腺を強く突き上げられて、背筋を電流が駆け抜けるようなびりびりとした感覚がして、切羽詰った声でないた。 「ふぎぃ、あううっ! そこあ、も、やめぇ!  あうっ! あああっ! なんかくるううぅっ!」  前立腺を直接擦られる快楽に龍之介はわけもわからずに喘いでいた。

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