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見る者見られる者そして繋がり【13】

礼二は震える手を下肢へと滑らせて、ついさっきまで翼の私物のマジックでかき回していたそこに指を差し入れて開いて見せた。 「ここ……ここがむずむずして……変な気分になって……それで……」  そう言いながら差し入れた指をくちゅくちゅと恥ずかしげもなく動かして中を掻き回した。 「ふあっ、あ……嫌いにならないで……」  こんなおかしなところを翼に見られて嫌われるかもしれないと思いながらも礼二の指の動きは止まらない。  眦に涙を浮かばせながら、自慰行為に耽る兄の白い肢体を眼前で見て、翼は顔を真っ赤にして口を押さえてそれを見下ろしていた。  息が上がって心臓がバクバク脈打つ音がやけにうるさく感じ耳障りに聞こえる。  礼二の白い身体に散らばるキスマークを見てカッと頭に血が上って再び、礼二を汚してこんな風にしただろう誰かに対する嫉妬心と怒りが沸々と込み上げてくるのを感じた。 「うぅっ…あぁっ…ごめんなさぃ……ごめ、なさ…ぁっ」  礼二が繰り返し謝りながらも、中に深く差し入れた白く長い指を動かして自慰に耽っている姿は淫靡でそれでいて痛々しかった。  知らず知らずのうちにまた眉根を寄せて、険しい表情をしていたのに気がついて、翼は兄をこれ以上不安にさせないようにと、荒くなる呼吸を何とか抑えて、柔らかい微笑を浮かべて幼い子供にする時のように優しく、礼二のうっすらと汗が滲んだ頭を撫でた。  髪を梳くように頭を撫でられて礼二が嬉しそうな吐息を吐き出した。 「兄貴は今日は何も悪いことしてないだろ? なんでそんな、何回も謝るんだ?」     なるべく優しい声色でそう翼が問いかけると礼二は緩く首を左右に振って眦に浮かんでいた涙の粒を散らせた。 (違う……違う……俺は……翼以外の男にえっちなことされても気持ちよくなれるような淫乱で……翼はそんな自分を嫌いになるって佐藤が言った……だから……)  礼二は差し入れた指で内部を掻き回しながら、佐藤に犯された時に言われた台詞を思い出していた。 『誰にでも感じるようなだらしの無い淫乱』 『翼君に知られたら嫌われちゃうかもしれないなぁ……』    (翼じゃなくても……翼以外の男にお尻の穴にちんこ入れられて、気持ちよかった……)  今もその時の事を思い出すと下肢に熱が集まり、礼二の肉茎は先端から大量に蜜を溢れさせて、後ろは差し入れた指を嬉しそうにぎゅうぎゅうと締め付ける。  それが目の前にいる翼を裏切っているような気がして辛くて罪悪感がある。  それだけでなく、佐藤に無理矢理犯されていたのは最初の方だけで最後は自分から入れて欲しいとお願いして突っ込んでもらったのだ。  そんなことを翼に知られたら、生きていけない――     礼二はそんなことを思い、罪悪感に駆られながらも、どんどんのぼりつめていく。  けれど、決定的な何かが足りなくてなかなか達する事ができなかった。  ぐしゃぐしゃに泣きながら自慰をする兄を翼は見ていられなくなり、礼二の両手を掴んで取り抑え、仰向けに横たわっている彼の上に覆いかぶさって、唇を唇で塞いだ。  薄く開かれた礼二の口の中に舌を差し入れて、動かすと、それに答えるように舌が差し出され押し付けられる。  お互いに舌を絡めあって息が付けなくなる程に深くキスをして、唾液を交換し合うような激しい接合に酔いしれる。  今はもう実の兄にキスを自分からするという行為に躊躇いも戸惑いも何も感じなくなっていた。  泣きながら「ごめんなさい」と繰り返し言うその唇を、礼二が甘党であるせいかほんのりと甘い咥内を味わうように舌でねっとりと舐めてなぞり、歯茎や歯並びを確かめるように、動かした。 「ん…んんっ…ふぁ…ふぅ…っ」  口付けの合間に礼二の甘く濡れた声と吐息が零れて、舌先を絡めあう水音と合間って、徐々に煽られて、自分を抑えることが出来なくなってゆき、深く差し込んだ舌先を動かして内部を突付き、掻き回し彼の咥内に溜まった唾液を味わうように啜りあげた。  互いの唾液を啜りあい、貪るような激しく、長い口付けを終えて唇を離すと、唾液が透明な糸を引き橋をかけ、名残惜しげにゆっくりと途切れて零れ落ちた。 「は、ふぅ……」  翼からしてもらったキスに酔いしれて蕩けきった満足げな表情で甘い吐息を漏らす礼二の口端を伝う二人の唾液が交じり合った蜜を指先で優しくそっと拭い取ってやる。  恋だとか愛だとかまだそういった意味で礼二を好きなのかどうかはわからない。  でも、彼が自分の事を弟としてではなく、一人の人間として、異性に恋する時の様な気持ちで、愛しているのは分かっている。  それに答えてやることがどんな結果を生むか、まだわからないけれど、自分にしてやれることがあるのなら、それで礼二が楽になるのなら、彼の寂しさを埋めてやれるのならそれでもいいと思った。  兄が自分に依存しきっているのは分かっている。  こういった事をしてやるのがそれに拍車をかけるということも――  彼の自立を促し、一人で何でもできるように、ひとり立ちさせるためにはこんなことをするのは間違っているのかもしれない。  自分の気持ちもハッキリしないまま身体を繋ぐことも、きっと正しくはない。  礼二が楽になるのなら、今はそれでもいいと思った。  何より、自分の欲望を満たすことになにかしら理由が欲しかったのかもしれない。    実の兄に欲情している自分が最初は信じられなくて戸惑いもあった。  でも今は、それよりも何よりも自分より先に礼二を抱いた誰かに対する、嫉妬心にも似た怒りで頭に血が上って正常な思考が出来ない状態だ。  今も眼前で横たわる礼二の白い身体に無数の赤い、印が散らばっていて、それを全て消し去ってやりたい衝動に駆られる。  全て上書きしてやろうと、一番目に付く礼二の白い首筋に付いた、赤い部分に舌を這わせて、口を付けて吸い上げた。 「あっ……つばさ、ぁ…? ふぅ……」  誰に付けられた印か今すぐにでも問い詰めたかった。  けれどそんなことをして礼二を不安がらせるのは良くない。  やっと熱が下がって病状が落ち着いてきたばかりで、またいつ調子を崩すか分からない。  今は、まだ、深追いは出来ない。  病み上がりの身体に無理をさせてこんなことをするのも本当はよくないのだろうけれど、兄をこのままの状態にしては置けないし、何よりもう歯止めがきかなかった。  吸い付いた首筋により濃い色をした鬱血の後が残っているのを見て、他にも散っている印を上書きして消してしまおうと、翼は礼二の体中に唇を滑らせ、軽く歯を立てて吸い上げる行為に没頭する。 「はぁ…ふぅ…んんっ……」  礼二はそんな翼の行動にどういった意味があるのか理解できず、体中を吸い立てられて、小さく声をあげながら甘い色を含んだ吐息を漏らし、されるがままだった。  首筋、鎖骨、胸、わき腹、臍周り、足の付け根、あらゆるところに散らばったその赤い印を吸い立てて全て上書きして自分が付けた印へと書き換えてゆく。 「ふう……っ」  全て上書きし終えて、礼二の身体に付けられた印が鬱血してより濃い色で浮き立っているのを見下ろして眺め、ほんの少しだけ、怒りと嫉妬心が和らいだような気がして、翼はため息を付いた。 「つばさぁ?」  礼二は、舌ったらずな、それでいて甘えたような色を含んだ声で名前を呼び、翼の顔色を伺うように自分の上に覆いかぶさっている相手を不思議そうに見上げる。  翼に吸われたそこかしこがヒリヒリとしてじわりと熱を持っているようだった。  でもそのヒリヒリとした痛みが、翼の唇に触れて吸われて愛撫された部分だと直接感じられるような気がして嬉しくなる。  頬を紅潮させて、潤んだ瞳でこちらを見返してくる、礼二を見ていてたまらなくなり、翼は彼の白い胸へと手の平を滑らせ、桜色の小さな粒に触れて人差し指でくりくりと弾いて弄り始めた。 「ふあっ…んんっ…つばしゃあぁ…っ」  触れられるのを待ちわびていた乳首を愛撫され、ヒリヒリとした痛みと、ビリビリとした快感に礼二が甘さを含んだ声色で嬉しそうに、翼の名前を呼んだ。     腫れてぷっくりと膨らんだ乳輪ごと人差し指と親指で摘み上げて、押し潰すように、強弱をつけながらこね回すと、礼二の下肢で震えていた肉茎が、桜色の先端から透明な蜜を嬉しそうに次から次へと噴き出して少しだけ開いた足の間を伝い、シーツにまで零れ落ちて、おもらしをしたときのようなシミがじわじわと広がっていく。  シーツの換えは今日、洗濯して干しておいたものがあるからいくら、汚してしまっても構わない。  こんな時でさえそんなことをふいに考えてしまう自分が可笑しくて翼は穏やかに微笑を浮かべていた。 「ふあっ、あっ、あぁっ、ああんっ」  くにくにと乳首を捏ね回す度に礼二が嬉しそうな声で喘いで、眦に悦びの涙を浮かばせて、緩んだ口端からはひっきりなしに涎が溢れて伝い、顔中をぐしゃぐしゃにして我を忘れて喘いでいる。  翼にえっちなことを夢ではなく現実でしてもらっていると未だに信じられなくて、目の前にいる翼が現実のものであるか手を伸ばして触れて確かめる。  自分に伸ばされた手がぺたぺたと頬や首や肩に触れて、左胸にたどり着いて、その場所を手の平全体で押すようにして触れられる。    手の平にトクントクンと胸の鼓動が直に伝わってきて、礼二はやっと目の前にいる翼が本物で、夢の中の出来事じゃないと確かめて、ほっと安心したような緩んだ表情で息を吐いた。  そんな礼二の行動にどんな意味があるか、翼は深くは考えず、指先で散々こね回したせいで更に、いやらしく赤く腫れた乳首を癒すように口に含んで、舌先でつんと触れて舐め上げる。   「んんっ、あぁっ、あんっ、つばしゃぁっ」  固く勃起して腫れ上がった乳首の弾力を確かめるように、舌先で押して、ぴちゃぴちゃと水音を立てながら、上下左右にころころと転がして、弾くように舐め回すと、甘さを含んだ吐息を吐き出し、口端が緩み、嬉しそうに笑みが零れた。 「はあああぁ」  気持ちよさそうに快楽に緩みきった表情で満足げに息を吐く、礼二の淫蕩な姿に煽られて自身の欲望が限界にまで膨れ上がり、ズボンの前がパンパンに張り詰めてだんだんときつくなっていく。  翼はたまらず、舐め回していた礼二の胸から一旦、口を離して、自分のズボンの前を緩めようとベルトに手を掛けた。   留め金を外し、チャックを下ろして、下着の裂け目から自身を取り出すと、勢いよく飛び出して自分の腹に付きそうなほどにいきり立ち、先端からは我慢汁が溢れて礼二の下腹や胸へと、飛び散って振り掛かる。    「ああ……」  感嘆の息を漏らし、うっとりとした表情で礼二は翼のいきり立った肉棒を見つめ、翼のモノに比べれば小ぶりで幼く、淡い桜色をした肉茎の先端から、じわりと蜜を溢れさせた。    翼の雄雄しく脈打ち、いきり立ったそれを見ているだけで、期待に、あらぬ場所がむずむずとしてくる。    擬似的にフェラをしているつもりで翼のマジックを舐め回しているうちに発情した体が、求めていたモノがすぐ目の前にある。  ずっと欲しくて堪らなかったモノを眼前に突きつけられて、礼二は口の中にいっぱいに唾液が溢れているのに気付き、ゴクリと喉を鳴らして、それを飲み下した。  昨日、夢の中で味わった翼の肉棒のほんの少し塩っ辛い味と濃厚な精液の舌触りと味を思い出して、飲み下しても、飲み下してもどんどん唾液が口の中に溢れ出てくる。 「欲しい……」  無意識にそんな言葉が自然と礼二の唇から零れ出ていて、それを聞いた翼は更に頬を紅潮させて自分のいきり立つ肉茎を掴んで見せた。 「あ……兄貴……俺の、コレが……欲しいのか?」  興奮気味に息を荒げながらそう言う翼の言葉に礼二は頷き、自分の薄く開いた口を指差して、甘えたような上ずった声でおねだりした。 「うん……舐めたい……翼のちんこ、舐めさせて……」  仰向けに横たわったままの相手に咥えさせるには、どうすればいいか少しだけ考えて、翼は礼二の胸の上に両足を開いて跨ぎあまり体重をかけないように気をつけながら彼の口元へと脈打つ肉棒を差し出した。  自分の口元へと寄せられた翼の肉棒に、待ちきれないとばかりに唇を寄せ、先端の穴からにじみ出る先走りの液を一滴残らず飲み干そうと礼二が舌先を尖らせて舐めまわして奉仕し始める。 「うっ……はぁ……兄貴……」 「んっ…んちゅ…ふぅ…ぁむ……ん」  桜色の舌を懸命に動かして、赤黒くいきり立った肉棒に、奉仕する礼二の姿を見ているだけでも煽られて、腰に重たい熱がわだかまってくる。    礼二はさらにそれを小さな口いっぱいに含み、口の中へと迎え入れて、舌を鈴口の割れ目にそって這わせて、汁が滲んでいる穴を抉じ開けるように、舌先を差し込んで、ぐりぐりと抉るように動かした。 「くっ…あぁっ…」  唇をすぼめて膨らんだ先端をちゅうちゅうと吸い立てながら、される舌技にたまらなくなって翼が無意識に腰を前へと突き出すようにして、もっとと先をねだるように肉棒を礼二の咥内へと中程まで押し込んで飲み込ませて咥えさせる。 「んぐっ…んむぅ…じゅる…っ」  礼二は自分の喉の奥にまで差し込まれた肉棒を当たり前のように受け入れて、頭を上下に動かして翼の肉棒を味わうように啜り上げた。  小さな桜色の唇を押し広げて肉棒がじゅぽじゅぽと出入りして、擬似的に挿入している時のような強烈な快感が翼の背筋を微弱な電流のように駆け上がる。  

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