1 / 13
第1話
疲れた…。仕事はとても遣り甲斐もあるし楽しいのだがさすがに疲れた…
「ねぇ。ちょっと飲みに行ってきていい?」
「は?何言ってくれちゃってんの!!??この辺りは夜は危険なんだからね!!アジア人なんてすぐ狙われちゃうんだからね!!」
「ん~やぁだぁ!!んならねぇ!!」
「ちょ!!待ちなさい!!九頭竜!!」
制止するマネージャーをひらりと交わし夜の闇に隠れた。
俺は水無瀬 九頭竜(みなせ くずり)。モデル兼デザイナーをしている。
仕事で訪れたこの国が治安が悪いのは良く知っているがずっとホテルに缶詰なのがとても苦痛だった
防犯グッズやらもちゃんと持ってホテルの近くのバーに入る。
初めて入った店なのだが落ち着いた雰囲気でムーディーな音楽が流れゆっくりと時が流れているようだ。とても居心地が良かった
適当にカクテルをつくってもらってゆったりとした時間を過ごした。
「あちらのお客様からです」
何杯目かのカクテルを飲み干すとすっと差し出された。
「スクリュードライバー…ね…」
ちらりと相手を見る。同じ日本人のようだ。同じ土地の者ゆえのこれ…かな?
スクリュードライバーは心を奪われたという意味があるらしいが…。
男が妖艶な笑みを浮かべてゆっくりと俺の側に来て腰かけた
「…水無瀬 九頭竜」
「へぇ。あんた知ってんだ。俺の事」
「知ってるよ。だって君は美しいもの」
そんなセリフ吐いても妙に似合う目の前の人。
「あんた…名前は?」
「美景」
「美景…」
「今夜はどう?君の噂は聞いてるんだ」
俺の手に手を重ね熱い視線で真っ直ぐと目を合わせながら彼が言う。
俺は一晩限りの相手を見付けて体を重ねることを昔からしてる。特定は作りたくない。色々と煩わしいから
「いいよ。これも何かの縁だから」
男の手を取り店を後にした俺たち。近くのホテルへ入って熱い時間を過ごした。
初めて下になったのだが…何の苦痛もなくただただ声をあげていた…
「九頭竜さん…」
「美景さん…」
見詰めあってはキスをして飽きるまで求め続けた。
翌朝少し早く起きた俺はホテル代を置いて先に立ち去った
「あの人…上手すぎた…」
また体が疼きだす…初めての事に戸惑う…でももう二度と会わない相手。連絡先もわからないのだからこれっきり。
初めて寂しいと思った。また会いたいと思った…でも…そんなこと絶対言わない。恐らく向こうも一夜限りのつもりだったろうから
ともだちにシェアしよう!