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―こうなっては逃げられない。
その瞳と腕に絡め取られてしまっては、逃げる術も隙さえも与えてはもらえないことを
世渡はどこかで知っている気がした。
「んっ・・」
ちゃぷちゃぷと淫猥な水音が室内に響き渡る。
柔らかい下腹の白い肌がうっすらと桃色に染まり、眉を顰めながら瞳を閉じる世渡の唇からは、甘い吐息が幾度も零れては溶けるように消えていく。
「・・っ・・」
絽玖の艶のある黒髪が上下に揺れる度に唇に指を差し込んだまま、世渡の唇が何かに耐えるような仕草を見せ、その度に低い吐息と共にちゅぷちゅぷと吸い付くような水音が大きく響いた。
絽玖の唇からちろりと覗いた赤い舌が、唾液と共にねっとりとした仕草で世渡の雄を下から上へと執拗に舐め上げると、無意識なのか世渡の下腹に力が込められていく。
未だ柔らかさの残る雄の裏筋をちろちろと舐めとるように舌を動かせば世渡の内腿が僅かに動き、閉じるような仕草を見せた。
「・・んっ・・ふっ・・・」
息を吸っては止める動作を繰り返しながら時折解く甘い声に呼応したのか、絽玖の唇が世渡の雄の先端に近づくと、そのままパクリと口に咥え一気にじゅるるっと強く吸い上げる。
「・・・っ・・あぅ!・・んぅっ・・・ゃあっ・・」
引き寄せられるようなその感触に瞳を閉じかけていた世渡の瞳が大きく開かれ、折り曲げていた膝を閉じようと動かすが、その膝は絽玖の手によって拒まれ、外側へと大きく開かれていってしまった。
「・・・ああっ・・」
「・・良い眺めですね・・世渡」
雄を口に含んだまま、絽玖がくぐもったような声を放つと「ひぅっ」と世渡の唇から一層高い声が漏れた。
先程よりも太さが増した雄を口に含んだまま、絽玖が顔を上下に動かすと熱を乞うように世渡の腰がゆっくりと揺れ、同時に左足の指が丸くなる。
「やはり、ここは素直だな・・」
咥内に含んだまま話されたせいで振動が直に伝わりびくりと震える下肢をそのままに、足の指が寝台の上に散らばる衣を摘まんでは引き寄せている。それはまるで何かに耐えているような仕草に見えた。
たっぷりと口に含んだ唾液が零れる事も構わないといった様子で、速度を変えながら絽玖が顔を上下に動かせば、無意識に世渡の唇から「・・・っ・・ぅぁ・・あぁ・・・」と、甘い吐息が漏れていく。
雄の下部にある膨らみを手の甲でたぷたぷと弄びながら揺れる絽玖の顔は世渡からは見えないままだ。
ぢゅぶぢゅぶとわざと大きな水音を響かせながら、舌で雄の裏側を何度も擦るように責めると生温かく柔らかな咥内の熱が世渡の雄を包み込み、じんわりとした温かさが身体中へ広がっていく。
寝台の衣を強く掴みながら耐える表情を魅せる世渡とは対照的に、絽玖の全身からは甘い金木犀のような芳香が強く香り、その匂いを吸い込んだだけでも酔ってしまいそうな危うさを感じてしまう。
そう、それはまさに媚薬のようでもあった。
太腿を優しく撫でながら「んっんっ・・」と顔を上下に揺らす絽玖の声が唇から漏れ出る度に、じゅぶじゅぶと淫猥な水音が一層高い音を出し、びくびくと世渡の腰が何かを乞うように上下に揺れていく。
「・・・嗚呼。あなたの此処は正直ですね。悪くなぃ」
唇を少し離しながら世渡を見上げる絽玖の表情は実に楽しげで。その余裕のある動きとは対照的に世渡の息は先ほどよりも上がっているように見える。
熱を帯び、昂ぶったままの雄の先端を舌でれろれろと強くなぞると世渡の声に艶が生まれ、甘さがより増していった。
「・・・んん・・っ・・・はぁ・・・っ・・」
指を強く噛みながら首をいやいやと左右に振る世渡に構うことなく「んっんっ」と吐息を零しながら絽玖が顔を上下に揺らしている。
寝乱れた寝衣の襟元に手を当てたまま足の指で何度も寝具の布を掴み引き寄せていたのだが、たっぷりと咥内に含んだ唾液と咥内の柔らかさを感じているうちに頭の芯がぼんやりと霞み、強弱をつけない一律の動きが段々ともどかしいものへと変化し、やがて快楽の波を乞うかのように「はふっ・・はふ・・っ・・」と絽玖の動きに合わせながら世渡の腰が無意識に上下に揺れた。
その変化を楽しむように絽玖がじゅるっじゅるるっと水音を響かせながら口を窄ませると
「・・・んぁっ・・・」と世渡の口から甘い声が零れては溶けていく。
口を窄ませたまま動きを速め、雄の先端を再度強く吸い上げると「んんっ・・ぁあ・・っ」と一際高い声を上げた世渡の背が軽く反った。
そのまま達するかと思った矢先、急に絽玖の唇がちゅぷんと離れ、反り立ったままの雄がぶるんと揺れた。そのまま達すると思っていた世渡の脳内を刺激するように、絽玖が世渡の雄の先端を指でゆるゆると擦っている。
与えられると思っていた快楽のその先を欲する世渡とは対照的に、絽玖の瞳の奥には怪しさを含んだ焔が生まれ、口元には僅かに笑みが浮かんでいるようにも見える。
世渡は指を何度も口元に当てながら「・・やぁ・・ん・・な・・ぜ・・?」と絽玖に乞うのだが、絽玖の方は「・・いけませんよ・・?まだ・・」と話すだけで、その先に進もうとはしていない。息が上がったまま、絽玖に視線を向けるが、内腿を柔らかな手つきで撫でるだけで雄に手を伸ばそうとはしていなかった。
「・・やぁ・・いっ・・」
「達したいのでしょう?・・ですが、まだですよ?」
「・・・・っ・・」
苦しそうに喘ぐ世渡の大きな瞳が涙で潤んでいる。ほろっと一筋の涙が頬を伝うと、その表情に満足したのが、反り立った雄をぴんと指で弾き、同時に世渡の腰が大きく震えた。
「賭けをする・・といったでしょう?」
「・・・・ぁ・・賭け・・」
「そう。賭けですよ」
「・・・・?」
「この先が欲しければ、貴方の方から私に口吸いをしてくれと乞いなさい。世渡」
「・・・・・ぁ・・」
「乞わなければ、昂ぶったまま朝まで過ごして頂く事にでもしましょうか?」
「・・・そ・・んな・・」
「あなたが言えば私の勝ち。あなたの欲しいものを全て与えてあげましょう。ですが、貴方が言わなければ私の負けという事になりますね。自分でどうにかなさい。出来るでしょう?」
「・・・あ・・」
世渡の首が無意識にいやいやと許しを請うような動きを見せたが、絽玖の表情は変わらないままだ。
「どうなさいますか?世渡」
「・・・っ・・」
「ああ。その昂ぶりのまま、四肢を縛ってしまうという方法もありますね」
絽玖の声は何処までも優しく世渡の耳へ身体の奥へと入り込んでくる。
「・・・私は気が長い性質ですから、このままでも一向に構いませんよ?」
「・・・っ・・」
「貴方の涙で濡れる頬は見ていてとても心地の良いものですが、貴方の昂ぶった雄より下のこの蕾はそうでもなさそうですね?」
「・・・・・・・」
クスクスと笑う絽玖の声に、羞恥を感じた世渡の体温が急激に上がっていく。
「・・・おや?自分で気づいていないのですか?先程からひくひくとまぁ・・はしたない事この上ない」
「・・ぅう・・」
「さぁ・・どうします?世渡」
「・・・あ・・・わた・・し・・は・・」
無意識に呟いた声が絽玖の耳に届き、くすりと笑う声が静かに響いた
甘く香るその淫猥な花の香りは、毒のようにいつか全身へと行き渡るだろう。
その先は、快楽というの名の解放か・・・それとも・・?
終
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