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第1話
俺は、大して頭も良くない。顔も不細工ではないけど微妙。背も172cmと微妙。体つき、運動神経微妙。
何でも微妙なことしかない至って平凡な男子高校生。
正直、年少からの幼馴染が眉目秀麗頭脳明晰運動神経抜群という何でも超人なのも微妙と思ってしまう要素の一つだ。
しかも、男女一人ずついるのに二人ともがである。
これは別に自分を卑下してるとかではない。曖昧な主観でなく、れっきとした数値が物語っているのだ。
高校受験のときに嫌というほど猛勉強したおかげで幼馴染二人と同じ学校に入れたもののちょっぴり後悔している。
背伸びした受験は後々辛い。勉強について行けない。
そういうわけで幼馴染二人に誘われたバスケ部を一年生の前期期末試験直後に辞めようとした。
これはその直後から始まる俺、佐野川透の逃避行の物語である。
「え、透辞めるの?どうして?」
「なんで?うまくやってたじゃない」
最後の部活の日の帰り、俺は一緒に帰っている幼馴染二人に部活を辞めることを伝えた。
「確かに、人間関係もバスケ自体もそこそこ楽しかったし上手くいってたと思う」
「じゃあなんで!?」
やたら前のめりに突っ込んでくる幼馴染一号の花宮香織ことカオちゃん。前述の通りの完璧超人でバスケ部のマネージャーをしている。
「うーん、ちょっと勉強がね……」
「そんなの今までみたいに僕が教えるのに」
こちらは幼馴染二号の前原公也ことコウ。これまた完璧超人で、一年生にして夏にあるインターハイ予選では既にレギュラーとして活躍予定。ちなみにうちは進学校だが、バスケ部を始め運動部も強豪ばかりである。
「流石に今、コウに教わるのは気が引けるよ。部活大変だろうし」
「じゃあ私が!!」
「カオちゃんも大変でしょ?コウと同じだけ活動しなきゃいけないんだし」
「「でも!!」」
なおも食い下がる二人。正直引き止められて嬉しいけど、そろそろ二人に頼るのもおしまいにしたい。現に高校受験とかももちろん俺も努力したけど、この二人がいなければ合格出来なかった。
だから、これからは自立しなきゃ。
「ていうか、もう退部届出したから」
「「え……」」
絶句する二人を見て申し訳ない気持ちになる。けれどもう決めたことだ。
「じゃあバイバイ」
明日からは朝練に行かない。だから、また明日ではなくバイバイ。
立ち尽くす二人を背に俺は家に入った。
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