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第2話

「なぁ、トオルのやつ何があった?」 「分からない……」 いつもの自信なさげな幼馴染はもうそこにいなかった。これ自体は喜ばしいことだ。ようやく俺たちの大事な大事な幼馴染が、自信を持てた。 だけど、これは戴けない。 それは隣にいる香織もだ。俺たち二人は、いつもトオルと一緒にいることを勝ち取ってきた。トオルは信じないかもしれないが。 クラスがほとんど一緒なのにもきっと偶然としか思ってないだろう。どんなペアワークでも課外活動でも3人もしくは香織か俺がついていたことも幼馴染だからと思っているはずだ。 まさか、こんなことが起こるなんて。 「きっと、頼らないようにしようとか思ってそうだよね」 「そうだな。頼ってほしいのに」 トオルはいつも俺たちを頼らない。強引に事を運んでどうにか手伝える程度だ。あいつは助けてもらってるから色々出来ていると思っているはず。 でも頼る必要がないくらい、あいつはあいつ自身が思っているより出来る。 「部活辞めようかな」 「それこそトオルが傷つく。それだけはやめろ」 「そうだよね……。これからどうする?」 「まぁ、距離を取ろうとするなら……一択だよな」 あの家に入る前のセリフ。明日は一緒に登校もしないつもりだろう。しかも部活をしないなら先に帰るはずだ。そうなるとどんどん一緒にいる時間が短くなる。それは嫌だ。 「……ついでにもっと攻めちゃおうかな?」 「は?お前にその権利は無いはずだけど?」 「だってどこかの誰かさんがのんびりしてるから?諦めたのかなって?逃げられてるし」 「うっさい。それを言うならお前もだろ」 「うっ……」 ショックを受ける香織。だが、実際逃げられたと言われると俺もショックを受ける。 俺たち二人はトオルに頼られたい以前に大好きなんだ。一生離れたくないほどに。中学生になる頃には周りは既に気づいて面白いほど遠巻きに見てたな。トオルは気づいていないけれど。 高校になって環境や人が、がらりと変わった今とてつもなく不安だ。それは香織も同じ。 「とりあえず退部届には部長の印鑑必要だよな」 「部長に明日問い詰め……相談しようか」 そう言って俺らも別れた。ああ、明日からは登校が二人か。 でもまさかトオルが俺ら二人に先手を打ってくるとは思わなかった。そうまでして俺らから離れたいって思ったのかと思うととてもショックだ。 ……ショックで気が狂いそうだよ、トオル。

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