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第3話
もう入学して2ヶ月経ったはずなのに初日のように緊張する。
だって今日は、俺にとって初めての一人登校。いつも乗る電車でだって乗り過ごしたらどうしようなんて緊張する。
いつもは完璧超人二人がいれば大丈夫って思ってたけど今日は一人。
というかあの二人と登校しないのってどれくらいぶりだ……?下手すると人生初かもしれない。うん、初めてだ。
ちょっと気分が上がる。初めてのことって楽しい。注意深く電車のアナウンスを聞きながら、ふと窓の外から電車の中へ視線を移した。
不自然に近い距離。
俺の斜め前くらいで俺と同じ高校の男子が痴漢されていた。相手は普通のサラリーマンに見えるけど、高校生の顔色が悪いし同意では無いだろう。まぁ、痴漢に同意もクソも無いが。
次の駅についたところで、その男子高校生と場所を入れ替えた。生憎俺には食指が沸かなかったようで、俺は何もされなかった。
「ありがとう!!助かったよ!!」
キラキラ補正が入る眩しい笑顔でお礼を言ってくれたのは同じ学校の三年生だった。
佐伯奏さん。名前もかわいい。
ちなみに容姿は幼馴染に引けを取らないきらきらしい感じだった。
「どういたしまして」
「同じ学校だよね?一緒に行かない?」
そんなこんなで奏さんと一緒に登校したのだが。
「「あいつ、誰!?」」
幼馴染二人に詰め寄られる俺であった。
ちなみに経緯を説明したら二人からイイコイイコと撫でられまくった。俺、もう高校生何だけど……。
「あ、俺今日学食行くから」
「「!?」」
いつもは俺はコンビニで買ったおにぎりとかを二人と食べるのだが、今日は学食に行くと聞いた二人は驚いていた。
「何でも良いからね!」
そう言われ、奏さんに肉うどんを奢ってもらった。どうしてもお礼がしたいと誘ってくれたのだ。
「ありがとうございます」
すみませんというのは違う気がして、お礼を言う。いえいえと眩しい笑顔が返ってきた。うん、先輩で男子ながらかわいい。ちなみに俺は172cmくらいで、先輩が推定160cmくらい。
上目遣いになっちゃうのもかわいいし、話し方とかもほんわかしててかわいい。痴漢に狙われるのも分かる。
「そういえば透くんは一人で学校来てるの?」
「はい、一緒に来てた幼馴染が朝練してて」
「幼馴染と一緒の部活には入らなかったんだぁ」
胸が少しちくりと傷んだ。自分から選んだはずなのに傷つくなんて。
暗くなってしまった俺に気づいたのか慌てた様子でどうしたの?と聞いてくれる奏さん。
心配させてしまった……。
「いえ、あの……辞めたんです、俺」
「ごめん、無神経だったね」
しゅん、としょげる奏さん。
奏さん曰く、この時期に辞める人も少なからずいるみたいだ。それを知ってたのに考慮出来なかった自分が浅はかだったと落ち込んだらしい。
俺としては勉強との両立の他に幼馴染からの自立も兼ねてることを説明がてら少し相談させてもらった。奏さん聞き上手過ぎて昼休み潰してしまった……。
「幼馴染とのこととか相談にいつでも乗るよ!助けてもらったし透くん良いコだし、いつでも頼ってくれて大丈夫だからね」
そう言い残して奏さんは三年生の教室に帰っていった。
性格良すぎか……。
またしても完璧超人に懐いてしまったことにまだ気づいていない俺であった。
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