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第5話

トオルが俺と距離を置いてはや一日。朝も昼も夜も満足に話ができなくてトオル不足だ。土日はテスト終わりで一年生は休んで良しと言われてトオルと二人でのんびり過ごしていた。香織は友達に誘われたとかで遊びに行ってたな。悔しがってたけどあいつもあいつで人気者だからな……。  それはともかく、土日久しぶりに二人っきりでゆっくり過ごして幸せだったのに、いきなりその翌日になって『辞めた』宣言だ。 心の準備も何もなく、登校は香織と二人、お昼もどこかへ行くし、帰りは部活があって当然一緒に帰れない。 土日一緒にいたおかげでまだ耐えられるけど、こんな生活がずっと続くなんてとてもじゃないが耐えられない。せめてお昼だけでも一緒にいたい。 きっと俺が一緒にいたいと言えば、登校も一緒にしてくれるし、帰りだってどんなに遅くても待ってくれる。トオルはそういうやつだ。 だけど、流石にこんな我儘は言えない。嫌われたくない。めんどくさいと思われたくない。トオルの前ではずっと良い人でいたい。 いい加減俺の気持ちに気づいてほしいな、トオル。 この想いは一日二日のものではないから。 「コウいっしょにあそぼ!!」 「こっちきて!!となりすわって!!」 「コウがいないのさびしいぃーー!!」 「コウっ!!」 小さい頃は俺のことを頻繁に読んでくれたトオル。引っ込み思案で人見知りだった俺は、いつもトオルに引っ張って助けて貰っていた。 それこそトオルが隣に引っ越してきた4歳の頃から。 「俺はさのがわ とおるっ!!きみは?」 俺の家に挨拶に来たトオルは同じくらいの年の俺を見つけニカッとしながら話しかけてくれた。  対して俺は母さんの足に恥ずかしくて隠れていた。するとトオルは近寄ってしゃがみこんで、そのときトオルより低かった俺に目を合わせた。 「えへへ、みーつけたっ」   かわいい笑顔でそう言ったのだ。当時可愛いものが好きだった俺がどれほどときめいたのかは筆舌し難い。 それから毎日会って少しずつ仲良くなっていった。俺はどうにかして仲良くなりたくて、人見知りとか引っ込み思案を押し込めて少しずつコウに話を振ったりした。 小学校に入る頃には、コウの隣は絶対確保していた。 アイツが現れるまでは。

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