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第8話

 自他共に認める名セッターの僕だが、それは発情期を迎える前の話。  紅林の大学だろうが何だろうが蔑まれ、邪魔者として扱われる。そう覚悟してきたのに……。 「伊都真(いとま)高の真幸だ」 「本物だぁ~」 「マジでトス上げてくれるんだ」  何か思いっきりウェルカムな雰囲気にたじろいでしまう。 「権力にモノを言わせ編入させてやったぜ」  褒め称えよと言わんばかりに両手を広げる紅林にチームメイト達がブーイングする。 「うわぁ。ゲスい」 「えげつな~い」 「権力者最低~」 「そんな事言ってお前ら真幸にトス上げて欲しくないのか?」 「上げて欲しいっス!」 「打ってみたい!」  そうだろう。そうだろう。と頷く紅林。ドヤ顔がムカつく。 「人としてアレだけど、いい仕事した紅林!」 「紅林様と呼べ。そして礼はマフィンにしろ」 「金持ちが庶民に集るな!」 「そーだ。そーだ。寧ろ奢れ!」  和気藹々とした遣り取りに忘れていたけど、僕まだ自己紹介もしていないんだよね。  今更だけど、した方がいいのかな?

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