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第11話
五分後。
薬が効いて何とか通常に戻った。
発情期だから仕方ないとは言え、紅林に噛まれたいとか。何考えているんだ僕は!
あり得ない。あり得ない。
悪夢を振り払うようにブンブンと頭を振る。
「大丈夫か雅也?」
「勝手に下の名前で呼ばないでよ。あと、さりげなく肩に腕を回すな!」
「俺に噛まれたいって思ったクセに」
「思う訳ないでしょ。寝言は寝てから言ってくれる?」
「へぇ」
何でもお見通しだと言うような笑みが本当にムカつく!
今度サーブ打つ時、わざと後頭部に当ててやる!!
「まぁ、今は思っていなくてもいずれ思わせるし」
「はぁ? 何それ。何処から来るのその自信」
「だって俺だし?」
自信に満ちあぶれた微笑みは、口にした事を現実のものとしてしまう力強さがあった。
「へぇー。精々頑張れば? 徒労に終わるだろうけど」
二度と発情期には紅林 に会わないようにしようと、僕は心に決めた。
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