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第5話
「兄はもう3ヵ月も寝たきりなのです。本当に助けられますか?」
「ああ。我に不可能なことなどない」
天使よりも悪魔のほうがきっと美しい生き物だ。
彼に出会って、ラファエルはそう思うようになった。
そうでなければ、魔族の手に堕ちる人間がこんなにも多いわけがない。
いまだに名前も知らないが、彼は律義に週に数回、屋敷へやってきてラファエルを抱く。
どんな術が施されるのか、その間、ラファエルがどんなに泣いても叫んでも、絶対に誰も部屋にはやって来ない。
隣りの部屋に控えているはずの、ラファエル付きのメイドはもちろん、屋敷の警備に立っているはずの夜警でさえも。
きっとこのまま、魔族が飽きてしまうまで体を貪られるのだろう。
あるいは魂まで食われてしまうのかもしれない。
そう考えると、ラファエルは絶望的な気持ちになる。
こんなことがいつまで続くのだろうと考えて不安になる夜もある。
あるいは時おり、怖くなることもある。
怖いのは魔族と取引きしたことではない。
ラファエルが怖いのは、自分が自分を保っていられるのかということだった。
このまま魔族に取りこまれて、自分も魔族になってしまうんだろうか?
魔族の淫らな性はまだ16歳のラファエルには想像もできなかったほどの淫蕩ぶりで、彼に抱かれている間、あまりの快楽に意識を失うこともたびたびだった。
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