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第12話

「今の状態はまさしくそうだろう? お前の目の前から弟の姿は消えている、契約通りだ。何か間違っているか?」 嘲る声で魔族は囁き、低く笑った。 「お前を呼び出したのは俺だ。召喚した人間の頼みを聞くのが筋じゃないのか」 「だから対価の分だけお前の願いは叶えた。さあ眠れ、話は終わりだ」 魔族がそう言うと同時に、兄の首ががくりと枕に沈んだ。 「本当にお前の弟はかわいいな…」 彼は眠ってしまった兄に語りかける。 「我を呼びだしてくれたことには感謝しよう。お前のおかげでラファエルに出会えたのだからな」 半年前、この魔族を召還したのはラファエルの兄だ。 放蕩を尽くしている兄よりも弟のほうが跡取りにふさわしいと推す声が大きくなって、自分の立場を危ぶんだ兄は弟を排除しようと画策したのだ。 だが、魔族はラファエルを一目見て気に入った。 ラファエルの美貌と素直な魂が、魔族を強く惹きつけたのだ。 あれを穢して欲望を引きずり出し、快楽の沼に堕としたらさぞかし素敵な抱き人形になるに違いない。殺してしまうのはもったいない、自分の手元に置こうと決めた。 契約は果たした。殺してくれとは言われていない。 「本当に淫らでかわいい抱き人形になった…」 魔界の大侯爵アシュタルトは紅い瞳を輝かせて酷薄に微笑むと、黒い翼を羽ばたかせ、音もなく姿を消した。 完  皆さま、いかがでしたか?  いつもよりエロく仕上げたつもりです(当社比)www  公開するのを忘れていましたが、2018年4月に書いたものです。  もう1年も前なのね(^_^;)

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