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中間試験が終わった5月。 廊下に張り出される順位表の前が賑わうのは、我が校の恒例行事。どうせ見なくても自分の名前が位置する場所なんて分かりきっている。 (……ほら) それでも足を運んでしまうのは、身についてしまった悲しい性分のせいか。 去年から変わらない首位とその下。 [中間試験 結果発表] 高校2年 総合成績 1.藤堂悠真 2.正木司乃 ・ ・ ・ 周りの憐れむような視線にはもう慣れた。 僕は正木司乃(まさきしの)。 2年1組の学級委員。取り立てて特徴もない一生徒。 本と猫が好き、嫌いなものは―――… ガラリと教室の扉を開けて、ため息をつく。校則の緩いこの学園で比較的真面目な生徒が集まるこのクラス。 けれど。 「…おはよう」 「ん、正木おはよ~」 手を振る友達の隣にある机はいつも空席だ。 「……アイツは?」 「あー、いつもの感じだろ」 そう、藤堂悠真の座席。去年からどうしても成績で適わず悔しい思いをしていたが、今年に入って同じクラスに振り分けられた。 どんな勤勉学生かと思えば。 「まぁ校内一の不良だなんて言われてるしな~」 からりと笑う友人を睨みつけて、席につく。 授業は全く出ないどころか姿を見ることも少ない。学校に来ているのかすら怪しいという。 そんな奴に負け続けている現状が悔しくて、どうにかならないものかとひとり唸る。 「ホームルーム始めるぞー」 号令と共に挨拶を済ませると、担任からこんな話が。配られたのは分岐調査のプリント。 「中間試験も終わったことだし、自分達の中でも文系か理系か見えてきてるだろーってことで、はいこれ。本格的に分かれるのは来年から、今回は予備調査って感じだな」 ガヤガヤと静まらない教室の中で用紙を見つめる。自分は文系だろうかとぼんやり考えていた、その時。 「あーそれと正木、藤堂にも渡してやってくれ。今日は学校に来てるみたいだから」 「はい?」 相手は教師という手前、視線だけで抵抗するも。 「あいつ呼び出しても職員室に来ないから、頼むぞ委員長」 手を合わせられて反論を飲み込んだ。 正木司乃。 本と猫が好き。 嫌いなものは―――…不良。

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