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2.
昼休み。階段を踏み抜きそうな勢いで踊り場まで上がる。荒い息は運動量のせいだけじゃない。
(……なん…っで!僕が!)
委員長だからと言われればそれまでだが、結局断れない自分にも腹が立って。深呼吸しても収まらない苛立ちを胸に、屋上へと続く扉を開け放つ。
給水塔の横。一段高いその場所にアイツはいた。
「おい藤堂!」
寝ているのか返事がない。舌打ちしたくなるのを堪えて見回した周囲には手頃な石が見当たらず。軽いプリントは簡単に飛ばされてしまうだろう。
「起きろよ」
梯子を登れば案の定ごろりと転がる金髪。僕より10cmは高いであろうその長身を蹴り飛ばしたくなって、ぐっと踏みとどまる。
「ん~……なに…」
「調査のプリント。今週末までに出せって」
上体を起こして欠伸をする姿は猫に見えなくもないが、断じて僕の好きな猫とは違う。
「えー……めんどくさ」
「面倒を押し付けられる僕の身にもなれ。そもそもお前が教室か職員室に来れば良い話だろ」
頭を掻くその仕草にカチンときて、思わず声に出してしまった。座っている相手を見下ろす立場だったせいもある、が。
「…委員長も面倒だなんて思うこと、あるんだ」
「授業も受けずにサボってる奴へプリントを渡す係じゃない」
からかうように皮肉のこもった声音を投げられ、バッサリ切って捨てる。少し考え込む素振りを見せたあと、コイツはあろうことか悪びれもせずにこう言い放った。
「……まぁ授業受けてなくても成績貰えるし」
その瞬間、何かが音を立てて切れる。
「はっ……お前なんてどうせ不正なルートで点数稼いでるんだろ」
金か、カンニングか。はたまた女教師と寝るくらいはしそうだ。
図星に違いないとタカをくくっていた僕は完全に油断していた。それまでへらりと浮かべていた笑顔が消え、視線だけで人を射殺せそうな形相の藤堂が目の前に。
「な、なん…だよ…」
思わず後ずされば、ふっと元のアイツに戻って。そのまま梯子も使わずに飛び降りる背中を見送った。
「委員長みたいなイイコちゃんには分かんねえだろうな」
ひらりと手を振り、去っていく。
残された僕はただ屈辱に震えるしかなかった。
―――やっぱり、不良は嫌いだ。
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