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3.
幼い頃から、人を見る目を鍛えられてきた。
それが自分の運命で、為になると。信じて疑わず。
新しい学年になってからすぐ、気付いたことがある。
俺のクラスの委員長。
「正木くん!英語の宿題、見せてほしいなー…」
「ええ、また?」
ちらりと視線を投げた先の、正木司乃。校則の緩いこの学園で、染めたこともなさそうな黒髪に、きっちりと着込んだ制服。いかにも真面目そうな委員長タイプだ。
頼まれ事を断っている姿は見たことがない。よっぽど人の役に立つことが好きなのだと、そう思っていた。
(……いや、)
けれど、実際はどうなのか。
自ら進んで委員長に立候補したとはいえ、本当に仕事をしたかっただけ、とはどうしても考えられなかった。
何か、別の理由が―――…
「…仕方ないな、はい」
「ありがと!助かる委員長~」
ノートを渡して苦笑いする、彼。
興味をそそられるには充分な人物だった。
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