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【2】セカンドコール……⑥

「それだけじゃない。俺には分かる。分かるんだ。先生は可愛いだけじゃない。その可憐さの中に、医師としての強い信念と男としての潔さが見える。大人しそうに見えて、実は気の強そうな所も好きだ。こうしていると戦国武将のような胆力を感じる」  天使なのか武将なのかはっきりしろ。全然違うだろうが。 「義を見てせざるは勇無きなり、だ」 「――は?」 「これは約束だ。愛の証でもある」 「へ?」 「夫婦盃の代わり、れっきとした契りだ。受け取ってくれ」  体をぐっと引き寄せられる。  あっと思うより先に触れていた。  唇に触れる熱い熱。わずかに獣じみた匂いと濡れた感触。  これは――キスだ。  ヤクザとキス。  いや、その前に男とキス。 「唇の感触まで合うな。やはりこれは運――」 「わぁっ! 誰か助けてくれ!」  惣太は叫び声を上げた。包交車にぶつかりながら病室の外へ飛び出すと、絶妙のタイミングでドアが開いた。待機していたインテリヤクザと視線が合う。その眼鏡がキラリと光った。 「若頭のお気持ち、大切になさって下さいね」 「嘘だろ……」  眩暈がする。いつも見ている病棟の廊下がぐにゃりと歪んだ。 「ファーストコール ~恋するヤクザの処方箋~」 第二章 冒頭お試し読み(了)

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