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第3話
金髪の男は、<王国>だけの護衛だったのだろうか。街に入ると俺は、ひとりになった帽子の男に立派な屋敷に連れていかれた。
眉をしかめたメイドに頭から水を被せられて、水浴びをさせられる。確かに<王国>では水浴びはたまに川でする程度で、最近は寒くなったのもあってしていなかったから、俺はだいぶ汚いのだろう。
「なにすんだよ……!」
おとなしそうな顔立ちの整った少年が俺のそばにやってきて、いきなりなんでもない顔をして俺の尻の穴に指を突っ込むと、ホースを俺の肛門に突っ込んだ。俺は思わず抵抗したが、そいつはなんでもないような顔でこう言った。
「中まできれいにしないと」
中まできれいにする? そんなところ誰も見ないし、またすぐ汚くなるのに? 俺はそう思ったが、とにかくこの館の使用人たちは俺を隅から隅まできれいにしたいらしく、俺は仕方なく従った。
気づいたら俺はメイドに派手な衣装を着せられて、やたらとでかい寝台の上に座らされていた。見たこともないような衣装だ。透明で肌が透けてほとんどなにも着ていないのと変わらないし、やたらとレースがたくさん使われている。こんな格好をしている俺の記憶にある人間は、母親くらいではないだろうか。俺が握っていた母親の袖口には、こんなきらびやかなレースがあしらわれていたような気がする。それは少し透けてもいた。もっとも、それが透けるのは腕元だけで、こんなに全身が見えてはいなかったけれど。
ドアが開く音がして、帽子の男がやってきた。そいつは俺の全身を舐めるように眺めた後、「合格でしょう」と言った。
「おまえは今日から黒曜 と名乗りなさい。もうすぐ玉髄 様がいらっしゃいますから。失礼のないように」
「あの、俺はなにをすればいいんですか」
よくわからないが、この玉髄様というのが俺の雇い主なのだろう。
「玉髄様お望みのことすべてですよ。おとなしく言うことを聞いていればそれで問題ありません」
それから俺は、先ほど俺の体を洗った少年が持ってきたお茶を飲まされた。なぜ使用人のはずの俺がこんな扱いを受けているのだろう。わかったのは、とにかくおとなしくしていなければいけないということだけだ。
やがて、やたらとごてごてした衣装を着た中年の男がやってきた。金糸や宝石やら、金がかかっていそうだということはわかったので、これが俺の雇い主なのだろう。
「初めまして、玉髄様」
俺が挨拶をすると、彼は酷薄そうな薄い唇を微笑みの形にした。顔立ちは整っていなくもなかったが、細い目が笑っているようで笑っていなくて、蛇のような気持ちが悪い目だ、と思った。
「ああ、黒曜と言ったね。おまえはこれから何をするのかわかってるかな?」
顎を持ち上げられて、俺の顔に男の吐息がかかった。見知らぬ男に体を近づけられて嫌悪感があったが、俺はそれを顔に出さないようにして答える。
「なんでもするつもりで来ました。仕事ですから」
男の唇が俺の首元に触れて、舌がそこに触れた。肌が粟立つ。気持ちが悪い。
「震えてるね?」
「いいえ……」
俺の全身が彼を拒否していた。でも、俺はなんでもすると言ったのだ。
「気の強い子はいいねぇ……ひざまずかせたときがたまらない」
主人の手が服を解いて、だんだんと肌が露わになっていく。首元を舐めた舌が今度は乳首に触れて俺はぞわりとした。吐き気がする。
「……ひっ」
変な声が出た。
「初めてなんだね。大丈夫、リラックスできるお薬も飲んだからね、すぐに気持ちよくなるよ」
そう言われて柔らかく下半身を握られて、俺は自分が勃起し始めていることに気づいた。近づくのも気持ち悪い男に、少し乳首を舐められただけなのに。
薬……、さっきの茶がそうだったのか。
「あ、……っ」
撫でられるたびに、毒のある草に触れてしまったときのような刺激が走ってビクリとした。
「イクときは、ちゃんと私の許可を取るんだよ。勝手にイってはダメだ」
「はっ…はい……」
腰が震えて、俺は思わず目の前の男にすがりついた。近づくのも嫌だったはずなのに。自分から。
「あ、ああ、玉髄様、あ、いきそうです……っ」
もう触れられていない乳首もガチガチになっていた。思わず自分で触りそうになって、俺は動揺した。なんだこれは。
「慣れてないの、かわいいねえ。一回イっておこうか?」
玉髄に激しく前を擦られて、俺は彼の手の中に精を放ってしまった。頭の中が真っ白になる。
「気持ちよかったね? 今度はほら、私を気持ち良くしてね」
まだ放心していた頭がとらえられて、主人の股間に引き寄せられた。口元に性器を押しつけられる。
ああそうか、俺は娼婦なのだ。そのとき俺はやっと気づいた。
そうだ、<王国>にはほとんど女がいなかったが、<王国>にいる女は大抵そういう仕事をしていた。男でもそういうやつはいた。女の数が足りなかったからだ。あそこに比べて女が多い街でも男がこういう役割を担う必要があるのかわからなかったが、まあ実際こうなっているのだからそうなのだろう。
それまで俺は、女を知らなかったし、男も知らなかった。朝には時々勃起していることがあって、たまに、他の少年たちが面白がって俺の性器を弄ってくることはあって俺もそれに応えたことはあったけれど、口でやったことはなかった。
それでも、それを俺の仕事として求められているのならやるしかない。
やり方はわからなかったが、とりあえずさっき手でされたみたいに動かせばいいのだろう。普段排泄するところを口にするのは抵抗があったが、俺は目をつぶって目の前のそれをほおばった。
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