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第7話
その生き物はらくだというらしい。
足元が砂でうまく歩けない、暑い土地に適した生き物だと琥珀は言った。
翌朝。
老人に見送られた琥珀は、街の外れにあるらくだ使いのところで値段交渉をしている。これから先は砂でいっぱいの砂漠と呼ばれる土地になって、こんな生き物でないと進んでいけないのだという。
俺は、昨日部屋に案内してくれた女性が用意してくれた、背中いっぱいの荷物を背負って彼の後ろに立っていた。
いつか返してもらうとは言われたが、少しぐらいは仲間として役に立ちたい。
俺が荷物を持つと伝えると、琥珀はまた微笑んで俺の頭を撫でた。
「じゃあ、頼むぞ」
それで、俺はこれを背負っているわけなのだった。吊り下げられた水筒は、ちょっと重くて背中側に引っぱられそうになるけれど。まあらくだに乗れば、それもだいぶ楽になるだろう。
俺の頭から首にかけては、これも朝渡してもらったスカーフが巻かれている。直射日光と砂よけだそうだ。下は、肌触りがひんやりとする生地のチュニック。夜は寒いので、マントもいるらしくてそれも俺の荷物に入っている。
「?」
不満そうに声を上げているらくだの表情を眺めていると、ちくりと、足首に痛みがした。何か、虫にでも刺されたのだろうか。
どこか痛がゆい感じがして、俺は体を包んでいるチュニックの裾を持ち上げる。
下衣を着ているので、痛みのあった場所はよく見えない。
「灰簾、話がついたぞ」
らくだを引き連れて、琥珀が俺の元に近づいた。
「おいで、乗せてやる」
彼はそう言って、片手を差し出した。俺が下ろした荷物を渡すと、琥珀はそれを手際よくらくだに結びつける。
それから俺は彼の手をとって、抱き上げられるのに身を任せた。
ぽんと、らくだの上に渡してあった布の上に乗せられて、俺はその生き物に跨った。思ったよりも視線が高くなる。
「わ、」
らくだが不快そうに体を振ったのだ。俺の重みが嫌なのだろう。
「しっかりつかんでろ」
滑り落ちそうな俺を押し戻して、琥珀は自分もその上に乗ってきた。俺は渡された手綱を握る。
大人の男の重みが乗って、今度こそらくだは本当に不快そうに、体を強く左右に振る。
俺はなんとか手綱を離さないようにしながら、もう片方の手で乗ってきた琥珀の服をつかんだ。
「おっと」
琥珀は俺の手の上に手を添えて、俺から手綱をつかみとる。
俺は後ろから琥珀に抱きかかえられるような格好になって、少し安心した。これで、落とされることもないだろう。
「落ちるなよ」
「はい」
らくだはまだ不快そうだが、俺たちから逃れられないことは悟ったらしい。
琥珀が手綱を引くと、一声低いうなり声を上げ、それからあきらめたように歩き出した。
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