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第20話
「……そうだな。悪かった」
素直に謝れば、双葉の表情がスッと変わる。
何処かホッとしたような、安堵した表情。
ごめん、双葉。
でもこれだけは釘を刺させて。
「……謝りついでに聞くんだけど。
もし悠が突然目の前に現れて、寄りを戻そうって言ってきたら………双葉はどうする?」
サッと双葉の表情がまた変わる。
そんな事、考えた事もなかったような表情だ。
困惑しながらも、緩く口角を持ち上げた双葉が笑顔を貼り付ける。
「悠は……そんな事しないよ」
胸の奥がツキン、と痛む。
「真っ直ぐ一途に、心に決めた人を愛する人だから……」
……悪い、双葉。
辛い事言わせて……
無理に、笑わせて……
「大輝だって、解るでしょ……それくらい」
それ以上、言わないで。
双葉の弱々しい瞳が、そう訴えている。
──ん、そうだよ。
だからこそ、双葉を諦められずに寄りを戻そうとするんだよ……悠は……
その時きっと、苦しむ事になる。
周りが見えず、ひたすらに突っ走る悠に流されながらも……
「……そうだね」
双葉の首元に目がいく。
もう、見た目には解らない程になった、索状痕。
もう二度と、双葉をこんな目に遭わせたくない。
双葉には、笑顔でいて欲しい。
光溢れる世界で、幸せになって欲しい。
その為の苦言。
……ごめん、双葉。
双葉には辛い言葉だってのは解ってる。
でも、頭の片隅にあるのと無いのとでは、少しは違うだろ……?
「悠は、そういう奴」
「……うん」
双葉……俺の事は、嫌いになってもいい。
でも、俺の願いだけは、伝わって。
ちゃんと、お天道様の当たる場所で
幸せになるんだよ。
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