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第19話

悠の時と似ている。 直ぐそこにいる双葉に、俺の手は届かない。 ──届いちゃいけない。永遠に。 「……ごめん、大輝」 会話が途切れ暫くの沈黙の後、双葉が再び口を開く。 何かを思い出したかのように、申し訳なさそうな顔をして。 「透さんに、大輝のこと話したらね……」 「………」 ──なに、話したんだよ。 変わらぬ表情のまま、瞬きもせず双葉の顔をじっと見る。 双葉の事だから、話の流れで俺の名前出して、突っ込まれて白状でもしたんだろ。 「今度、大輝に会ってみたいって、言われて……」 ……そんなの真に受けるなよ。 単なる社交辞令って奴だろ。 「……んー、何でかな」 「え、………あ」 「俺の事、何か言ってた?」 「……べ、別に、大した事は……」 双葉の瞳が泳ぐ。 頬もどことなく赤い。 ……だったら、こっちも白状して貰おうかな。 「なに、言われたのかな?」 テーブルに片肘を付き、双葉を下から覗き込む。 柔やかな笑顔を貼り付けて。 「正直に言ってごらん?」 「……え、えと」 双葉の瞳が忙しなく左右に動く。 こういう押しに弱い所が、可愛くもあり放っておけない程心配でもあるんだけど。 その双葉の目が伏せられ、眉尻を下げたまま口を開く。 「悠の事は忘れて………その……、大輝と、くっついてみたら……って」 ……ああ、成る程ね。 心配して家に来てくれる友人がいる……とでも言ったのだろう。 その友人に好意を持っているかどうか探るために、軽く吹っ掛けてみた……て所か。 「……んじゃ、くっついてみる? 試しに」 意地悪く言ってみる。 口角を緩く持ち上げて。 柔和な笑顔を浮かべて。 透という奴が使っただろう手管で。 「何、言ってんの……」 複雑な表情。 俺を捉えた瞳が揺れる。 完全に目が伏せられ、瞬きを小さく数回。 困ったように、少しだけ口角を上げる。 「……冗談でも、そういう事……言わないで」

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