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※第13話
いつの間にか意識を無くしていたらしい。
目を覚ますと美味そうな飯の匂いがして、視線をあげると斎川が俺を見て、ご飯できてますよと、何事も無かったかのように声をかけてきた。
夢だったのかと一瞬思いかけたが、腰に響く鈍い痛みは、あれが現実だったことをまざまざと俺へと突きつけてくる。
「なんで、まだいんだよ........で、でてけっ、ていったろ。強姦野郎、ぶち........コロスぞ」
情けないくらいガラガラの声が俺の唇から吐き出される。
強姦された。
頭の中から抹消したい記憶。
完全に俺の身体は、この男に屈服していた。
「強姦?恋人同士のセックスは、強姦なんて言わないんだよ」
にこやかな表情で告げる斎川を見て、俺は背筋がぞくりとして全身が凍りついた。
コイツはサイコパス野郎だろうか。
あの行為がレイプでなくて、なんだろう。
こんなヒョロい優男に強姦されたとか警察に駆け込む気はなかったが、これは、ヤバい。
俺は顔を引き攣らせる。
「ミカちゃん。告白しあったのに、覚えてないなんて酷いな」
耳元で囁かかれて、あまりに斎川の異常性をさらけ出されて俺は殴ることすら出来ずに、カタカタと震えるしかできない。
「そんな怖がらないで。怒らないからね。ちゃんと証拠はあるよ」
輝くような笑顔でにっこりと笑い、斎川はスマートフォンを取り出して、画面を俺に見せつけた。
『ミカちゃん........ッン、はあ、好きだよ........ッでも、両思いじゃないと、これ以上できないよね』
クスクス笑いながら言って腰を引く斎川に、ぐちゃぐちゃの顔で泣きながら行為の続きをねだって腰をすりつけるのは、俺だ。
覚えていないが、眉を八の字にして必死でねだる姿は、快楽に溺れてバカになっているようだ。
『ンンンッ、ああ、たかっ、ね........ああ、おねが、い、ああっ』
必死に懇願する自分を見たくなくて顔を逸らすと、斎川は俺の頭を押さえつけて固定する。
瞼を閉じて逃れようと首を振る。
『ミカちゃん........恋人同士ならもっとハメハメしてあげられるよ、ね、恋人ハメハメしたいよね?』
『ンンンーーッあう、あ、はめ、はめして........おねが、い』
『ちゃんと好きだから、恋人はめはめしてって、言って』
目を閉じていてもあられのない声をあげて、斎川に媚びる俺の声がきこえる。
何もかも失って構わないから、この聴覚すべて破壊してしまいたい気持ちだった。
「も、わかった、から。とめて、くれ」
『あ、ああっ、すき、っ、ああ、すき、ひ、こいびと、はめはめ、いいッ、きもひ、いい』
こんなのは、俺じゃない。
こんな、のは、ちがう。
「ちゃんと分かってくれた?ね、オレから逃げたら、わかるよね........?」
しっかり脅迫してくる斎川を見上げて、俺は人生が終わる鐘の音を聞いた気持ちで頷いた。
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