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【発展編】心寄せる人 1
こんにちは&はじめまして!志生帆 海(しいほ うみ)です。 ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
今日から『幸せな復讐』の「恋の行方」のリンク部分を書こうと思ったのですが、(コンテスト参加作品につき)1万字以内という文字制限があったため、かなり端折っていることに気が付きました。
私としてはもう少しじっくりと二人が歩み寄っていく過程を書きたいと思いますので、一旦昨日の話までを【出逢い編】と区切りをつけ、今日からは【発展編】として瑞樹と宗吾の視点を織り交ぜていこうと思います。
需要があるのかわかりませんが、書きたいものを書くのがスタイルなので♡この先もお付き合いしてくださる方がいらっしゃいましたら、どうぞよろしくお願いします。
今日は瑞樹視点です↓
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「一緒に歩いても?」
「あっはい」
公園で自己紹介し合った滝沢さんと、そのまま駅まで歩くことになった。
先週まで一馬と肩を並べて歩いた道だから、戸惑ってしまう。頭の中が軽くパニックを起こしていて……気の利いた言葉なんて浮かぶはずもない。
一馬とは別れを決めてからも……僕の方から最後の一瞬まで変わりなく過ごして欲しいと願い出ていた。
優しい一馬はそれに応じ、共に通勤できる最後の朝も変わりなく、本当に何もなかったかのように僕は笑っていた。
ただ心の中では悲しみがじわじわと侵食してくるのを感じつつ。
それにしても滝沢さんって背が高いな。背も肩幅も。一馬よりも何もかも違う。
歳……いくつだろう?
お子さんもいるし雰囲気も落ち着いているから、きっと僕よりずっと年上だろうな。
こんな風に一馬のことを思い出しつつ、滝沢さんのことを知りたい気持ちがどんどん芽生えて来るという、なかなか厄介なものを……僕は抱えてしまった。
滝沢さんと並んで歩く距離感。
居心地が悪いわけじゃなくて、こういう感覚を何と呼べばいいのか。さっきから心臓がドキドキしっ放しで、ぐるぐる頭の中で考え出したら公園から先の景色を楽しむ余裕なんてなかった。
「瑞樹は、どっち方面に乗るの?」
うわっ!
いきなり名前を呼び捨てられた。
一馬でない男性からこんなに親しみを込めてまた名を呼ばれるなんて、思いもしなかった。
「……東京方面です」
「じゃあ一緒だな。俺は銀座」
「あっ僕は日比谷です」
「へぇすごく近いね。よかった。じゃあ仕事の合間にランチが出来そうだ」
「……」
「くくっそう意識しないで。取って食いやしないからリラックスして。男友達とランチなんて珍しいことじゃないだろう」
「あっ……そうですよね。あの、電車来たみたいです」
「へぇやっぱりこの時間だとかなり混んでいるね」
「ええ」
なんだか恥ずかしい。
僕はさっきから変に意識しまくりだと、自意識過剰な自分への自己嫌悪でしゅんと凹んでしまった。だから満員電車の中でじっと俯いていると、滝沢さんからの甘い視線を感じた。
「さっきの話だけど、俺としては意識してくれた方が嬉しい」
耳元で囁かれ、耳たぶが瞬時にカッと熱を持った。
(可愛い……)
滝沢さんの心の声が聞こえたようで、照れ臭い。
それに意識していなかった満員電車の人との密着が気になった。だって揺れる度に、滝沢さんの胸元に僕の頭がコツンっと何度もあたってしまうから。
「わっすみません」
「大丈夫だよ。もたれていいんだよ」
そんなこと言われたら、ますます意識してしまう。
でも嫌じゃない。むしろ触れ合う部分から、彼の大人な優しさが溶け出すようで、心地良い。
やっぱり僕は恥ずかしくて、また俯いてしまった。
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