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深まる秋・深まる恋 15

「お兄ちゃん、カボチャが『おむすびころりん』みたいに、ころがって来たよ~」 「わっ! 芽生くんありがとう。っていうか、もう着替えたの? 可愛いうさぎさんだね、宗吾さん見て下さい」 「おお! ウサミミつけて、服までモコモコで抱き心地良さそうだな。なんと尻尾までついているのか」 「うん。ほら見て見て!」  カボチャを持ってお尻をフリフリする芽生くんの様子が可愛かった。そのまま僕と宗吾さんで手を繋いで夜道を歩いた。  昔、両親にしてもらったことを今度は僕がする。この道は間違っていない。これでいい。そう思える幸せな瞬間だ。 「なぁ芽生、その尻尾と耳をあとでちょっとパパにも貸してくれないか」 「んーなんで?」 「……瑞樹にもつけてみたい」 「宗吾さん!」  ふぅまったく油断も隙も無い人だな。といいつつ宗吾さんが喜ぶのなら……なんて思ってしまう僕もついにアレの仲間入りなのか。イヤだ。 「おーい!仮装の服が揃ったので、今からくじ引きをするぞ。自分があてたものは絶対に着ること!」  流さんが張り切った声でブンブンと手を振っている。  はたして一体何の仮装をすることになるのか。まぁこのメンバー限定だったら何でもいいという吹っ切れた気分にはなっていた。 「なぁ瑞樹は今まで仮装をしたことあるか」 「それは……ありますよ」 「何だって! それはいつだ?」 「いつって……あの、新入社員の余興で……」 「何だって! まさかそれって女装じゃないよな?」 「……まぁ……一応……そうでしたが」 「くそぉ! 」  宗吾さんがドンドンと地団駄を踏む。そんな大げさな。同期5人全員で酔っ払いながらしたので、そんなやましいものではなかったのに。 「よし決めたぞ。今日は絶対、瑞樹の女装を見る! 」 「はぁ……くじで当たったらちゃんと着ますので、どうか落ち着いて」  鼻息の荒い宗吾さんを窘めた。何だか宗吾さんって知れば知る程面白い人だ。 「お兄ちゃん~こんなパパでごめんなさい」 「ふふっ大丈夫、だいぶ慣れたよ」 「前はこんなんじゃなかったのに、ヘンだなぁ」  それぞれがくじを引いた。  翠さんと流さん、丈さんと洋さん、僕と宗吾さん、皆、顔が真剣だ。薙くんだけは何でもいいのか余裕の態度だった。  結果発表──  流さん→レースたっぷりのドレス!  翠さん→タキシードに仮面の男  丈さん→魔女!  洋くん→ドラキュラ伯爵  薙くん→猫耳カチューシャと尻尾  宗吾さん→ナース!!  僕→白衣の医師  翠さんと洋くんと薙くん、僕は安堵のため息。  他の面々の悲鳴が……すぐさま聞こえてきた。 「ナースなんてありえん! 嫌だ!」 「俺は着ないぞ、ド……ドレスなんて絶対にありない!」 「流兄さん、一体何でこんなものを買ったのです? この魔女の衣装は胸も開き過ぎだし、スカート丈も短すぎて破廉恥だ!」  わわっ、すごい! 真っ二つに分かれたな。よりによってそっち? と言いたくなるのは分かる。宗吾さんと流さん丈さんは大ブーイングだ!   そこに翠さんの『鶴の一声』 「君たちね……『武士に二言なし』だろう。諦めて着て見せておくれ。僕は見たいな。なぁ流……駄目かな」 「翠兄さんは……はぁぁ、こうなったらもうヤケクソだ!」  本当にお気の毒だ。三人は衣装を抱えてブツブツ言いながら隣の和室に入ったが、どうなることやら。  一方、残された僕達は平和に着替えることが出来た。それにしても次、あの和室の扉が開くと、一体どんな光景が待っているのか……かなり怖いな。  僕は医師の白衣を羽織ってみた。なんだか学生時代の理科の実験を思い出すな。洋くんはドラキュラ伯爵になった。妖しい男の色気が漂っている。翠さんはタキシードに仮面姿。これはまた素晴らしい。このまま仮面舞踏会に行けそうな風格だ。薙くんは可愛い猫耳で、とてもキュートで軽やかだった。   「可愛いですね!」「決まっていますね」「キュートだね」  お互いにまともな姿を大いに喜びあった。 「わーお兄ちゃんたちも変身したんだね。みんなすごくにあってるよー」  芽生くんにも受け入れてもらえて大満足だ。僕達は芽生くんと一緒に記念撮影をして仮装を楽しんだ。  やがて隣の部屋から不平不満の声が聞こえてきた。ちらっと頭の中で宗吾さんのナース姿を想像してみると、全然似合わなくて……悪いけれども気持ち悪くなった。 「どっドレスが、や、破れそうだ。レースがキモイ! 」 「ひぃーもう駄目。その逞しいスネ毛の足に網タイツってないだろー」 「スカートがパツンパツンで歩けん。しかも胸元のボタンが止まらない……く、くるしい」  三者三様の悩みがあるようで、どうにも床をズルズルと這い蹲っているような変な音がする。 「お……おにいちゃん、怖い。おばけがくるかも」 「う……うん」  襖がやがてゆっくりと横に開く……  そこには!

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