250 / 1741
恋の行方 9
「瑞樹……やっとだ……やっとここまで来た」
「あっ……」
僕は宗吾さんによってベッドに優しく押し倒され、仰向けに寝かされた。
今宵……このまま最後まで抱かれる覚悟は出来ている。
丁度一年前の今日が、最後に一馬に抱かれた日だった。だから僕の方も、今日がいいと思った。勝手な考えだが、この日に宗吾さんに僕の身体ごと塗り替えて欲しくなった。それに少し前から……宗吾さんに抱かれたいと僕の方も強く欲情していた。
ところが、熱い口づけを交わしながらも、お互い緊張でガチガチだった。
僕も宗吾さんもそれぞれ経験はあるはずなのに、まるでお互い『初めて』のようにぎこちない。
宗吾さんが僕の上で困ったように眉根を寄せる。
「参ったな。もっとカッコよく抱くはずが……上手くいかないよ。なぁ瑞樹……俺がこの日をどんなに待っていたか分かるか」
「……あ……宗吾さんのことを……長く待たせてごめんなさい」
「いやいいんだ。いい経験だった。即物的に欲しくなかった。時間をかけて君の心ごと抱きたかったから」
「心ごと……」
「君のことはバス停でずっと見ていたよ。彼氏に笑いかける笑顔が可愛いなと。だからあの日ひとりで泣いている君を公園で見つけて、とても放っておけなかった。弱っている所につけ込んだ気がして、最初は引け目を感じていたんだ。だから君が俺だけを見て愛してくれるまで待とうと……」
「そんなことないです。僕もあの公園で会った時から……」
「瑞樹……その先をちゃんと言ってくれないか」
宗吾さんが嬉しそうにもう一度熱い口づけをしてきた。
それから続きを舌先で促された。
「んんっ……はっ……」
宗吾さんの熱風で息苦しい程だ。今までにない程の官能的に大人のキスに酔いしれる。
「最初……俺のことどう思っていた? 少しは気になっていた? 」
「あっ……あなたのことが気になっていました。最初から……」
「……ありがとう。俺たち……ふたりで幸せになろう」
「ふたりで……ですね」
パジャマのボタンを外され、優しく開かれた。
素肌が露わになる。
すぐに僕の平らな胸に彼の手が触れてくる。ここまでは宗吾さんとも経験済みだ。
でもこの先は……
心臓の鼓動がドクドクと、もう、うるさいほどだ。
戸惑う僕の手は優しく制され、僕の胸に宗吾さんがガバっと顔を埋めたてきた。
口づけをそこに? と思ったら突然チュッと上に吸われた。
不意打ちの刺激を浴びて、腰がビクッと揺れる。
更に胸の尖りだけでなく乳輪全体を口に大きく含まれた。舌先では小さな粒をころころと巧みに転がされ……左の胸の粒は、彼の大きな手で器用に摘まれたり、指の腹でじれったく転がされていた。
刺激が溜まらない。
もう……ずっと前だ……僕が最後にこんな風に愛されたのは。
「あっ……」
徐々に覆い被さっている宗吾さんの体重がかかってくる。普段は意識しない器官を宗吾さんに何度も何度も吸われて、軽いパニックを起こしそうだ。
でも……僕は宗吾さんに与えられる刺激に付いて行きたい。このまま!
「そう……ごさん、宗吾さん」
何度も何度も、僕を抱きしめ愛撫してくれる、彼の名を呼んでしまう。
それがどうしてなのか、僕の心は知っている。
一馬を思い出さないためだ。
宗吾さんに上書きして欲しいと望んでいるからだ。
甘い刺激を受け続け、僕のモノも芯を持ち始めていくのを感じた。宗吾さんもそれに気づいたらしく、体重を下にずらしていく。
胸はしっとりと濡れていた。
今度は下腹部に一段と大きな刺激を感じ、躰が跳ねてしまった。
「あ……あのっ、宗吾さん」
「ん?」
抱きついていた手が背中から離れてしまい、少し寂しくも怖くもなった。だから宗吾さんの少し硬い黒髪に触れてみた。
とても男らしい髪質だ──筋肉のついた背中も素敵だった。
宗吾さんの頭が揺れている。僕の脚の間で──
内股を開かれ持ち上げられ、宗吾さんの舌先の熱を、中心にある薄い皮膜に感じて戦慄が走る。
音が……卑猥だ。ぴちゃぴちゃと濡れた音に、耳たぶまで朱に染まる。
「……やっ、そこ」
巧みに動きまわる舌先が幹を辿り、先端をすっぽりと包み込んでくる。
「っん、ん──」
強すぎる刺激に遅れを取り、いやいやと首を振るが、下半身を抑え込まれて抗えない。
熱風だ──熱風が吹いている。ここには。
僕は甘ったるい息を吐きながら、うなされるように、また彼を呼ぶ。
「宗吾さん──宗吾さんっ! 」
「ここにいるよ。瑞樹、君を抱くのは俺だ」
その通りだ。僕を抱くのは宗吾さんだ。
躰が驚くほど過敏になっていて、もう、あまり持ちそうにない。このままじゃ宗吾さんの口に出してしまう。でも押しのけようとしても、宗吾さんが僕を抱え上げるように抱くので、びくともしない。
「いいんだ。出せ」
「……や、出てしまう! お願いです……離してっ」
「このままでいい」
「……んっ、あっ……っ」
熱が沸騰するように股間が熱くて、訴えても宗吾さんは顔をあげてくれない。最後に先端を丸ごとすっぽりと包まれ、きゅうっと力強く吸われた瞬間に、とうとう思いっきり弾けてしまった。
ドクドクと脈打ちながら放ってしまったのがダイレクトに分かって、羞恥に染まる。
宗吾さんはそのまますべて呑み込んでしまった。そんなのちっとも美味しくないのに──もうっ。
「瑞樹、最高に可愛かったよ」
一度深く抱きしめられる。そのまま脱力する暇もなく、躰中を愛撫される。
脇腹から臍、胸元。太腿の内側へと、宗吾さんが万遍なく手を滑らせる。
なんだか泣きたい程恥ずかしくなって、手を交差させて顔を覆ってしまった。
だって……1年前まで散々一馬に抱かれた躰のくせに、なんだか何もかも初めてみたいにドキドキしてしまうんだ。
僕は少し変だ。
心の声は、やはり宗吾さんにも聞こえてしまった。
「ちっとも変じゃない。俺で感じてくれるのが凄く嬉しいよ。今日はここで終わりじゃない。これからが本番だ。続けてもいいな」
「分かっています。最後まで……」
宗吾さんの手が下肢を辿り、やがて尻の奥のぴったりと閉じている部分を探しにやってくる。
****
リンク部分 『幸せな復讐』恋の行方
ともだちにシェアしよう!