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恋の行方 8

 とうとう、この時間がやってきた。今日で瑞樹と公園で出会ってから丸1年か……いい節目だよな。 「俺たち……もう一歩近づこう」 「はい」  仰向けに寝かせた瑞樹の顎を掴んでクイっと上を向かせ、柔らかい唇を啄む。何度かノックすると、そっと濡れた唇が開かれたので、舌を誘い出してグッと潜り込ませた。 「んっ……あっ……」  控えめな口づけから強弱をつけ深めていくと、瑞樹の息も上がり吐息が熱を持った。そのまま俺の唇は、瑞樹の首筋をじっくりと辿り、鎖骨まで下りる。 「なんだか、部屋が……暑いですね」 「そうだな、すごく火照ってる」 「僕……実は……かなり緊張しています」  腕の中の瑞樹が照れくさそうに目を細め、俺を見上げてきた。  その甘い笑顔に煽られる。  だが……今日はこの甘い笑顔を崩してみたい。まだ俺が一度も見たことがない表情を、どんどん見せて欲しい。    瑞樹の感じる顔、恥じらう顔、イク……時の表情。  今日は最後まで瑞樹を抱く。だから全部しっかり見せてもらうぞ。  躊躇うことなく彼のパジャマのボタンに手をかけると、瑞樹はゴクっと唾を呑み込んだ。細い首の喉仏が上下する様子すらも綺麗だと思った。 「んっ……」 「今日はやっぱり、このパジャマにしたんだな」 「宗吾さんもですね」 「ペアだな」 「はい!何だかささやかなことすらも嬉しく感じます」 「君といるだけでも嬉しいよ」  瑞樹の函館の母が用意してくれたパジャマを、俺たちはお互いに着ていた。 (といってもすぐに脱ぐことになるが……)  なんだか意識し出すと、恥ずかしいものだな。 「なぁ……これは俺たちにとっての『初夜』なんだよな。そう考えると、突然猛烈に照れくなってしまったぞ」 「はい……恥ずかしいですね。なんかこう改まって……するのって」 「今日は……君をどこまでも気持ちよくさせたい」 「……はい。宗吾さんも……その……」 「まずは君からだよ」 「あっ……」  ボタンを手早く外し、前を一気にはだけさせる。何度か……ほんの何度か触れた慎ましい二つの小さな尖りが照明を落とした部屋に浮き上がる。いい色だな。  白い肌に色づく淡い色……ソソラレル。  彼の左胸に手の平をぴたりとあててみると、ドクドクドクと早い鼓動が聴こえた。 「あっあの……何を? 」  瑞樹の手が伸びて来て、俺の手に重なった。細くて長い指がキュッと堪えるように絡んでくる。 「緊張しているな、随分と」  瑞樹は顔だけでなく、心も綺麗なのだ。そしてまだあまり見たことのない躰も……やはり綺麗だった。  真っすぐ伸びた指。北国育ちらしい白くきめ細かい肌……触り心地は吸い付くように、しっとりとしている。余計な脂肪のついていない細身の躰だが、不健康ではなく、しなやかだ。  これは堪らない……最高に好みの躰を目の当たりにして、一気に欲情が高まる。  瑞樹の躰は、まるで新雪のようだった。  もちろん前の彼氏との長く深い関係があったのは知っているが、今俺に躰を開く姿は初めてのように震えていた。そして俺の方も、瑞樹によって1年かけて浄化してもらったのか、まるで初めてのように興奮で震えていた。  暗闇で瑞樹と目がバチっとあったので、お互い少し照れ笑いをしてしまった。 「何だかもう……お互い緊張しすぎたな。あぁもっとカッコよく抱くつもりだったのに」 「宗吾さん……でも僕、嬉しいです。宗吾さんも緊張しているのが伝わってきますね」 「よし、そろそろ本気を出すぞ」 「えっ──」  俺は瑞樹の胸元に軽くチュッと挨拶のような口づけを施し、その後、口を大きく開いて、小さな尖りを乳輪ごとパクっと口に含んだ。  瑞樹に施す、初めて行為の始まりだ。  これからじっくりと愛撫していく。全身を隈なくだ── 「あっ……んんっ……」  左胸の突起を指先で摘まんで捏ね、右は舌先で細かい刺激を与えるように舐めた。  このまま一気に抱くよ。  君を攫うように強く抱くから…… 「俺にしっかり付いて来てくれるか」 「は……い。宗吾さんと一緒に……」  瑞樹は自分を奮い立たせるように大きくコクっと頷き、もう一度ギュッと自らの手を俺の肩に回し、自分からしがみついてくれた。 「宗吾さん……」  まるで確かめるように、何度も何度も……俺の名前を呼び続けた。  それが呼び水のように、俺の欲情がグンと高まった。      

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