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箱庭の外 23
「瑞樹、俺は……」
「宗吾さん、僕は……」
深夜の電話で、言葉でたっぷり癒してもらったはずなのに、駄目だ。
生身の宗吾さんを見たら、止まらない。
宗吾さんの息遣いを近くに感じ、温もりを傍に感じたら、もう──
お互いが情熱の炎に包まれていた。
「宗吾さん……抱いて下さい」
「いいのか。俺も君が欲しい」
宗吾さんのベッドに迎え入れてもらう。
枕を濡らした夜があった。
彼の匂いを恋しがり、縋った夜だった。
「おいで……」
「はい」
今日はいつになく忙しくパジャマをすべて脱がされ、すぐに全裸にされた。
それから静かに仰向けに寝かされた。
宗吾さんの熱い視線がシャワーのように注がれ、恥ずかしい。
「あ、あの……」
「悪い、目の前に瑞樹がいることが信じられないというか、嬉しくて何度も見てしまうよ」
「宗吾さん」
彼は僕の躰を、存在を確かめるように撫でていった。
宗吾さんの急く気持ちと僕の急く気持ちが重なって、心地よく感じた。
もっと、もっと感じたい。
「なんだ?」
「宗吾さんも脱いで……下さい」
「あぁ」
パジャマを潔く脱ぎ捨てた宗吾さんが、ぎしりとベッドを揺らし、僕の躰に覆い被さってくる。
こうやって宗吾さんという人の重みを受け止める瞬間が好きだ。
僕の首筋に、宗吾さんが顔を埋めてくる。
「瑞樹の匂いだ。君が恋しかったよ」
肩や項、喉仏に、唇を丁寧にあてがわれ、吸ったり舐めたりされ、くすぐったさと気持ち良さに翻弄されてしまう。
「ん、んん──」
唇をしっとりと濡らされる。
何も身に着けていないので、すぐに胸の尖りを探られ、指先で丹念に弄られる。
「あぁ……あ、やっ……」
すっかり宗吾さんに慣らされたそこは、硬くなり膨らんでいるようで恥ずかしい。
宗吾さんを待っていた下腹部が、じんと熱くなる。
唇を啄まれ吸われ……胸をたっぷりと弄られる。
僕からあえやかな息が漏れると、宗吾さんも満ち足りた表情を浮かべてくれた。
舌と舌を絡め合う濃厚な口づけを交わしながら、僕の後孔にそっと触れてくる。
「ここ……硬い蕾になってしまったな」
「……かもしれません」
「君に痛い思いはさせたくない。よく解そう」
「……はい」
「足をもう少し開いて」
双丘を押し開かれ、そこにたっぷりの潤滑剤を解かされる。
くちゅくちゅと……卑猥な音が部屋に響く。
僕と宗吾さんの息遣いと共に。
僕の前も勃ってしまい、恥ずかしい。
宗吾さんが慎重に指先を中に潜らせ、曲げたり伸ばしたりしてくる。
躰の内部に宗吾さんを感じ、内側から込み上げてくる熱を感じ、腰がピクピクと震える。
「いいか」
「あ、ああっ、あ──」
いつもより長い時間弄られ、熱い息がとぎれとぎれに漏れてしまう。
やがて指が抜かれ、濡れた蕾に彼のモノをズンっと一気に突き入れられる。
「んん──っ」
よく濡らしてもらったお陰で、スムーズに抽挿された。
「大丈夫か」
「……はい」
宗吾さんが腰を擦りつけるように上下に躰を揺らすと、僕に快楽の波がやってくる。
「あ……いいっ、宗吾さん、すごいっ」
「いいか」
喉を喘がせ、宗吾さんにしがみ付いて、快楽の波に身を任せる。
もっと揺らして……
もっと、もっと……
宗吾さんとだから怖くない。
この人に抱かれるのが好きだ。
僕は宗吾さんが好きだ。
それから恥も外聞もない程、乱れてしまった。
1週間ぶりの逢瀬だ。
しかも途中で辛く苦しい事件を乗り越えての、ようやく再会した二人の逢瀬だ。
止まるはずもない。
いつもは聞くことがない……宗吾さんの低い呻き声が耳元に聴こえ、ゾクっとした。同時に僕の中も、かつてない程の熱を持っていた。
「んんっ、あ、あ、もういきそうっ……」
「俺もだ。うっ──」
宗吾さんも、低い声で呻いた。
男らしい色気がある声だった。
深く強く、内側を抉られて擦られる。
もうおかしくなりそうな快楽だ。
「くっ。ううっ……」
中に熱い物をドクドクとたっぷりと注がれているのを感じ、茫然とした。
あれ……僕の……出なかった?
でも……すごく気持ち良かった。
「瑞樹……君もイッタ?」
「……はい」
「良かった」
宗吾さんが嬉しそうに唇を合わせてくると、彼の息遣いから興奮をダイレクトに感じ、猛烈に恥ずかしくなる。
そこからは、お互いに唇で会話した。
肌と肌、唇と唇、そして大切な部分と大切な部分。
人はぴったりと繋がれるように出来ているのだなと、しみじみと思う行為だった。
「……瑞樹、もしかして……さっきドライでイケたのか」
「し、知りません。もう──」
「はじめてだな。ここだけで気持ち良くなったとは……嬉しいよ」
チュッと嬉しそうにキスをされ、そのまま胸を吸われ、チリっと痕をつけられた。
「あっ、そこは駄目だって言ったのに」
「悪い。でも今日は許してくれ」
「……いいですよ。僕にも……お守りを下さい」
そう答えると、宗吾さんは嬉しそうに僕の胸の周りを吸い上げた。
達した余韻で過敏になっている躰は、その度に小刻みに震えた。
これじゃ……宗吾さんをもっと欲しがっているみたいだ。
「瑞樹、人っていいな。好きな人とこんな風に繋がれて……生きている間に、こういう行為で愛を伝えあい語れる時期って限られている。だから俺たち……この先も一瞬一瞬を大切にしような」
「僕も、似たような事を思っていました」
「嬉しいよ。ところでもう一度しても?」
「ふっ……いいですよ。僕も……まだ宗吾さんに触れたいです」
宗吾さんを受け入れると、熱い想いが広がっていく。
どんなに彼が僕を愛してくれているか。
僕がどんなに彼を愛しているのか。
「宗吾さんに出逢えて良かったです」
「俺でよかったのか」
「はい、宗吾さん程、僕を一途に愛してくれる人はいません」
「そうか。俺もだ。また君と同じ事を考えていた」
行為の最中に……
今度は息を弾ませて、告白しあった。
互いが互いを求め合っている。
愛し合っている──
伝えたい想いがあるのなら、躊躇わない。
求めてやまない人がいるのなら、愛を尽くそう。
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