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特別公開 番外編SS 『ふたりの渋谷デート』3
お知らせ(不要な方はスルーでご対応を)
志生帆 海です。
いつも読んで下さってありがとうございます。
リアクションも本当に励みになっております。毎回ありがとうございます!!
申し訳ないのですが……
本日は多忙だったこともあり、気持ちが乗れず、昨日の続きを書く気力がありません。
Rシーンはけっこう体力がいりますので……(^^;
旅行先で羽目をはずしてしまうお話……この二人ならではという事でご理解くださいね。
という訳で、今日は『渋谷デート』の続き置いておきます。
(エブリスタのスター特典より転載です)
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特別公開 番外編SS 『ふたりの渋谷デート』3
瑞樹とデートらしいデートをするのは久しぶりだ。
一緒にランチして写真展を見て、もうそういうトキメキはとうの昔に失ったと思っていたのに、彼と共有できる時間は格別だ。
「宗吾さん、チケット代は僕が出しますので」
「そんなの気にするな」
「いえ、さっきのランチはご馳走になったので」
「わかった。じゃあそうするよ。ありがとう」
一緒に暮らすようになっても、こういう律儀な所は変わらない。
俺はいくらでも猫可愛がりしたいと思っていたが、瑞樹はそれを望まない。付き合っていくうちに、俺も瑞樹との関係はもっと対等でいいと思えるようになっていた。
だから俺も素直に甘える。
写真展は、俺からすると一風変わったアングルが多かった。
被写体を真正面から捉えたものではなく、雨で濡れるガラス窓の向こうを通り過ぎる一般人や、窓枠の陰に隠れるように見える人。
カラー写真だが、色を極端に絞っていて、色の洪水とは縁遠い。
なるほど。こういう見せ方もあるのか。俺も広告代理店に勤めているので、非常に勉強になる。
っと、あれ? 瑞樹はどこだ?
いつのまにはぐれてしまっていたので慌てて戻ると、瑞樹は一枚の写真パネルの前に立っていた。
「気に入ったのか」
「雪が……」
「恋しいのか」
「そうなんです。東京は雪が積もらないので……去年も今年も」
写真は一面の雪の中、オレンジ色のレインコートの子供が道を斜めに横切っているシーンを上から撮った写真だった。
まるでキャンドルの灯火のようだな。子供が雪に映えて……
「この子は芽生くんみたいですね。 今頃楽しんでいるかな」
「今日はお気に入りの映画だし、ご機嫌だろうな。瑞樹はどうだ? 俺といて楽しいか」
わざわざ聞くことでもないが、つい訊ねてしまう。
まるで愛を確認するように。
「もちろんです! 久しぶりに宗吾さんを独り占め出来て嬉しいです」
うぉ! 胸の奥がキュンっとなる(男のくせに俺もロマンチックだよな)これというのも瑞樹が可愛すぎるせいだよ。
「函館に行くか」
「え……」
「雪を見に行くか」
「いいですね。宗吾さんと芽生くんと一緒に」
写真をすべて見終わると売店があった。ポストカードや図録などが売っていたので、瑞樹は目をキラキラ輝かせて眺めた。
「瑞樹に何か買ってやりたい」
「あ……じゃあポストカードを1枚いいですか」
「1枚だけでいいのか」
「はい。あとはもう心にしまいました」
「そうか……じゃあ」
「選んでいただけますか」
「俺でいいのか」
「はい!」
20種類ほど並ぶポストカードから、俺は1枚を選んだ。
「これでどうだ? 」
「えっ何で分かったのですか」
「なんとなく」
俺が選んだのは雨の風景だった。
でも悲しい雨ではなく、洋画に出てきそうなビビットなピンク色の傘が上部に映り、雨の道路に滲み出ているような写真だった。
「これ、好きです。人の感情と似ていて。僕が宗吾さんを想う気持ちと似ているので、気になっていました」
はぁ、もう瑞樹は天然の誘い受けだ。
このまますごい勢いでホテルに連れ込んで愛したくなってしまう。
「宗吾さん……行ってみますか」
ええぇ! いいのか! 行くって……俺と同じこと考えているのか。
「本当にいいのか。行くって、その……」
「僕もなんだか、そんな気分になってしまいましたよ」
まるでポストカードの中の傘のように頬を染め上げて、恥ずかしそうに笑う君が、最高に好きだ!
そのどこまでもノーブルなスーツ姿を、この手で脱がしたかった。
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