463 / 1732

心の秋映え 29

「瑞樹っ」 「宗吾さんっ……」  両手をシャワーブースの壁についた姿で、背後から宗吾さんの熱く昂ったものを受け入れた。  彼を躰の奥で感じ淫らに締め付けると、自分の屹立からも熱をポトポトと放出していた。 「うっ……もう」  ガラスが白く曇っていくのを見ながら、意識が遠のいていった。  その後…… 「瑞樹……みずき、起きたか」 「えっ」  気が付くと僕はベッドに横になっていて、パジャマの中の素肌はさらさら、さっぱりとしていた。 「あ、あの……」 「ごめんな。感じ過ぎたのと逆上せたみたいで、シャワーブースで意識を飛ばしてしまったんだ。ほら、水を飲め」 「あ、はい……」  上体を起こさ、渡されたペットボトルの水を飲もうとしたが、まだ躰に力は入らなかった。 「おっと、まだ駄目みたいだな」  宗吾さんがグイっと水を口に含み、唇を押し当てて来た。 「あ、……っ」  ごくりと嚥下すると、あやされるように頬を優しく撫でられた。 「よしよし上手だな。もっといるか」 「……はい」 「さっきはすごく可愛かったよ」  男なのに可愛いという言葉に喜んでしまう。宗吾さんに愛されるのが心地よくて堪らない。  抱かれるほど、好きになる。  もう一口、もう少し……    僕の躰は、抱かれた余韻にまだまだ浸っていたいようだ。  そして安心したのか、再び微睡んでしまった。  明け方しっかり目覚めると、宗吾さんに抱きしめられたまま眠っていた。 「あっ──」  すぐに昨日の痴態を思い出し、猛烈に恥ずかしい気持ちになった。  彼の匂いに包まれていると、昨日解された部分が勝手に疼きだしてしまい困惑した。今すぐ宗吾さんを起こして、ここに埋めて欲しくなってしまう。  こんな淫らな考えを抱くなんて、僕はなんて節操ないんだ。  こんな人間だった?   宗吾さんに抱かれる度に、躰が作り替えられているような気分だ。 「いや、今日はもう無理だ……」  僕は彼の腕をすり抜け、芽生くんのベッドに移動した。  芽生くんは昨日行き倒れたように眠ったままで、すぅすぅといつものように可愛い寝息を立てていた。  ぐっすり眠っているね。  昨夜のバスルームでの騒動……気づかれなくてよかった。 「君のパパを独り占めしちゃったね。ありがとう。ふぁぁ……」  芽生くんの添い寝をすると陽だまりの匂いに安堵したのか、また眠くなってきた。  ふぅ……僕、かなりバテたみたいだ。  慣れない事をしたからだな、きっと。  練乳とかシャワーブースとか……僕には未知の体験過ぎましたよ、  隣のベッドを横目で見ると、宗吾さんは満足そうな顔で眠っていた。  きっと起きたらケロッとして元気なんだろうな。   「ん……おに……たん」 「あっごめん。起こしちゃったかい。僕はここにいるよ」 「……ん……だっこぉ」 「まだ起きるには早いから、一緒に眠ろうね」  寝ぼけた芽生くんを抱きしめて寝かしつけているうちに、僕もまた眠ってしまった。 ****  朝、目覚めると腕の中の瑞樹が行方不明になっていたので焦ったが、すぐに芽生と一緒に眠っているのが分かりホッとした。  彼が俺の腕から逃げ出したのは、昨日かなりしつこく抱いて、調子に乗っていらぬことをしまくったせいか。だとしたら居たたまれない。  だが、慣れないプレイじみたことにも懸命に応えてくれた瑞樹が、とにかく可愛かった。  シャワーブースに押しつぶすように抱いてしまった。彼の細腰をきつくホールドしガラスに擦り付けた行為には、俺も興奮してしまった。  実は瑞樹が逃げ出してしまいそうで言えなかったが……昨夜の情事、全部、浴室の鏡に映っていたんだよな。  だから俺は二倍興奮してしまったわけさ。そんでいつもの倍、瑞樹の中に放出してしまった。すまん……。  さてと、そろそろ起こすか。疲れているのは承知だが、朝食の時間が終わってしまうし、その前に、朝風呂にも行きたいからな。 「おーい、そろそろ起きろ! 朝風呂に行くぞ」 「ん……まだ……眠い……です」 「むにゃむにゃ……」  瑞樹は気怠そうで、芽生はまだ夢の中か。 「駄目だ。ほら、布団を捲るぞ」  ところがパッと布団をはいで、ギョッとした。  瑞樹の浴衣は大きく胸元が乱れ、芽生がそこに子猫のように顔を埋めていた。  うぉ……!   自分が昨夜散々瑞樹の胸を吸ったのは、そっちのけで驚愕してしまった。  まぁ……よく見たら、偶然の産物なんだが。  浴衣は着崩れしやすいものだし、芽生の寝相が悪いのも承知だ。  だがこれではまるで、親子の授乳風景だぞ!   あー、昨日のアレ……つまり練乳プレイに完璧に引きずられているな。 「ん……むにゃむにゃ」  更に芽生の口元がまるでおっぱいをしゃぶる時のようにパクパクしたので、驚いてしまった。 「芽生、コラっ、もう起きろー!!」 「え、わ……? め、芽生くん?」  目を覚ました瑞樹も顔を赤くし、仰天していた。  今日は旅行最終日。  とんでもない幕開けだが、やっぱり旅はいいな!  普段と違う朝がやってきた。  俺は元気いっぱいだが、君のコンディションはどうだ?  今日も俺と旅をしてくれよ。  今日も空は秋晴れで、心の中は秋映えだ。

ともだちにシェアしよう!