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聖なる夜に 7

 お出かけから帰ったあと、ボクはおにいちゃんと、おフロにはいった。  おにいちゃんとお湯につかりながら、今日見たエイガのことを、たくさんお話したよ。  おにいちゃんはいつもニコニコ笑って、楽しそうに聞いてくれる。だからボクは、もっともっと、おしゃべりしたくなる! 「芽生くん、そういえば、サンタさんにお手紙を書いた?」 「あっ、忘れていた!」 「ふふ、早く出さないと間に合わないよ。ご飯が終わったら書こうか」 「うん!」  どうしよう……まにあうかな。少しシンパイだな。  するとおにいちゃんが、ポンポンっと頭を撫でてくれた。 「大丈夫だよ。明日、速達で出そうね」 「ソクタツって?」 「ビューンって、いっきに届くよ」 「やったぁ!」  思わずおにいちゃんに抱きついてしまった。  おにいちゃんは、いつだって、嬉しそうに笑ってボクをだっこしてくれるんだ。だから、だいすきで、だいすきで、だいすきで、たまらない!  あ、そういえば……きょねんのクリスマスは、おにいちゃんはケガしちゃって、そばにいなかったんだ。そのことを思いだしたら、急にしんぱいになった。 「どうしたの?」 「おにいちゃん、もう、おてて、いたくない? ことしはずっといっしょにいてくれる?」  おにいちゃんの手をさすってあげると、大きくコクンとうなずいてくれた。 「もう痛くないよ。今年は家族で仲良く過ごそうね」 「うれしいなぁ」 「さぁ、そろそろ髪を洗ってしまおう」 「わかった~目をぎゅっととじるから、はやくね」 「ふふっ」 **** 「おー、サッパリしたか。弁当を温めておいたぞ。今日はリビングで食べようか」 「いいですね。雰囲気が変わって」  弁当と飲み物だけの夕食なので、ダイニングテーブルではなく、ソファの前のローテーブルに移動した。  それにしても、風呂上がりの瑞樹は石鹸の香りがして、ますますいい匂いだ。いつも瑞樹と風呂に入れる息子が羨ましいよ。 「パパ、テレビ……みたいな。だめ?」 「そうだなぁ、今日は特別だぞ」 「やった!」  普段は食事の邪魔になるので見せていないが、今日は特別だ。クリスマスも近く、明日は日曜日だし、俺も、なんとなく浮き足立っている。だからソファを背もたれに、3人で並んでテレビを観ながらの夕食を取った。 「あ、宗吾さん、何か飲みます?」 「そうだな。ビールでも飲むか」 「はい! グラスと一緒に持ってきます」 「パパ、テレビをつけて」  芽生が今はまっている大人も子供も夢中のアニメの録画をつけてやる。 「じゃあ、いただきまーす」 「おう!」 「宗吾さん、ビール、持ってきました。どうぞ」  グラスとビールを俺の前に置いて芽生の横に座ろうとする瑞樹の手を、思わず掴んでしまった。  俺の横に座って欲しい。 「瑞樹は、今日はこっちな」 「あ……っ、はい」    瑞樹、俺、芽生の順番で座り、弁当を食べ始めると、瑞樹に触れたくなって、さり気なくテーブルの下で、彼の手を握ってしまった。    瑞樹に早く触れたくて……もう我慢できない。この1週間、お互いに多忙で、ろくに触れあえていなかった。 「あ……あの」 「なぁ瑞樹、ここに炬燵を買わないか」(炬燵があれば、もっとイチャイチャできそうだ) 「炬燵ですか。函館の家にはありましたよ。懐かしいです。あれはいいですよね。温かいし、よく広樹兄さんと炬燵の中で足がぶつかって可笑しかったな。そのたびに兄さんが言うんですよ」 「なんだって!」(な、なんだ、そのイチャイチャ話は!) 「『俺の足が長過ぎて悪いな』って。ふふ、兄さんは単に炬燵に潜り過ぎているだけなのに、おかしいですよね?」 「おかしいというか、役得というか……う、うらやましい!」 「え? どうして、そうなるんですか」 「君に触れられるなんて」  芽生はアニメに夢中になっているので、さり気なく今度は瑞樹の肩を抱いた 「な、ここに買おう、早く買おう」 「わ、分かりました」  瑞樹の頬は途端に赤くなり、照れ臭そうに視線を外し、芽生の観ているアニメを観だした。すると突然画面が切り替わり怖いシーンになった。鬼が出て来て主人公を襲おうとするシーンだ。すぐに主人公が刀で戦って勝つので、芽生は「やったー」と手を叩くが、瑞樹はビクッと怖がっていた。 「瑞樹、大丈夫か」 「えぇ、子供向けのアニメなのかと思ったら、案外怖いですね」 「あぁそうだな。子供は単に勝ち負けだけに夢中になるが、俺たちはそうもいかないよな」 「はい、それに少し冷えてきましたね。寒っ……」  温めるように、もっと深く肩を抱いてやる。 「瑞樹は、俺が守るよ」 「宗吾さん……僕は本当に、ここが好きです。だから……どうか離さないで下さいね」 「ずっと一緒だ。間もなくやってくるクリスマスも正月も……何気ない普段の1日も、一緒に過ごしていくパートナーだよ。君は」  寒い冬もいい。  好きな人との距離が、ぐっと近くなる。     あとがき(不要な方はスルー・長文です) **** 年内最終話です。明日からは季節はずれますが、クリスマスの話になっていきます。瑞樹が靴下を贈った人たちの話にも触れ、寒い冬ならではの醍醐味を書いていきたいです。 今年は『幸せな存在』を沢山の方に読んでいただけて、嬉しかったです。 のちほど、『つぶやき』でゆっくり年末のご挨拶させていただきますが、 エブリスタさんの年間の人気ランキングで、なんとなんと3位でした💕1年間ノンストップで書いた作品なので嬉しいです。このお話が沢山の方に可愛がってもらえて、幸せです。あと、おもちさんとのクロスオーバーも更新していますので、ぜひ、年末気分に浸ってください。 読者さまのお陰で楽しく書いています。 いつもありがとうございます。良いお年をお迎えください。 来年も宗吾さん。瑞樹。芽生のことをよろしくお願いします。

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